保健の窓

狭心症、心筋梗塞

鳥取県立中央病院心臓内科 那須博司

狭心症、心筋梗塞の症状と治療

  心臓は昼夜間断なく血液を送り出すポンプの役目を果たしています。1日に10万回拍動を繰り返す臓器です。心臓の筋肉へは絶え間ない血液による酸素、脂肪酸の供給が必要です。 そのために心臓には豊富な栄養血管(冠状動脈)が発達しています。


 虚血性心疾患とは、冠状動脈の動脈硬化により心筋への血液供給が阻害されて、症状が現れます。狭心症は、血管の狭窄のため労作などにより心筋酸素消費量が増大して、症状が発現してきます。症状の持続時間は10分程度までといわれています。急性心筋梗塞の場合は、血管が閉塞して、リアルタイムに胸部症状出現して持続します。いずれも胸部症状としては痛みというよりも絞扼感であったり、灼熱感を訴えられます。その随伴症状として、冷汗、左手の放散痛、頚部や歯に至る症状、背部痛などがその重症感を物語ります。このような症状が自覚された折には、早めに医療機関に受診してください。特に、急性心筋梗塞への移行は一刻を争う病態があります。血管内皮細胞の損傷により血管内に血栓を形成してきます。病変部の急激な狭窄、閉塞や、血栓遊離によるより遠方への血管閉塞により、病状は命に関わることさえあります。

 

 

狭心症、心筋梗塞の症状と治療

  狭心症や急性心筋梗塞で受診した患者さんは、初診時に症状をお聴きした上で、身体所見をとり、胸部X線写真、心電図、心エコー検査 が当日に行われます。その結果により、確定診断として冠動脈CT、心筋シンチグラム、冠動脈造影を行っていきます。検査は高齢の方であっても、ある程度の理解力と生活能力があれば可能です。


 専門医療機関では内服治療を基本として、血行再建が必要と判断される症例にカテーテル治療とバイパス治療の振り分けを行います。まず、カテーテル治療ですが、病変部の拡張を主体とした方法です。全体的な侵襲が少ないのが長所です。血管の形態を保持するのにステントという金属の網を血管内の内張りとして使用しています。近年、薬剤溶出性ステントが開発されて、再狭窄がよりいっそう少なくなっています。入院期間は数日です。冠状動脈-大動脈バイパス治療は侵襲が大きい(胸骨縦切開)のですが、 一度に多枝疾患を治療可能です。カテーテル治療が高リスクと判断されるような症例にも治療の可能性があります。入院期間は数週間かかります。治療法については、医療機関の専門医の意見に従っていただければよいと思います。