保健の窓

消化器がん検診のこれから

鳥取県医師会理事 岡田克夫

検診見直す機会に

現在、鳥取県では消化器がんの検診として胃がん検診、大腸がん検診、肝炎ウイルス検診が行われています。受診率はまだ十分とは言えませんが、がん検診は精度の確保された検診を多数の方が受診していただくことで死亡率減少効果が表れてきます。受診率の向上のため休日検診の機会を設けるなど様々な取り組みがされていますが、みなさまに関心を持っていただくことが最も大切と考えています。平成22年には鳥取県がん対策推進条例が制定されました。これを機会にがん検診について見直していただければ幸いです。

大腸がんは近年増加しているがんの一つですが、女性のがん死亡原因の第1位になっています。一般的に大腸癌は進行してからでないと症状が現れませんが、大きなポリープや癌の表面から出るわずかな出血を検出するのが大腸がん検診です。便から検体を採取して提出していただく検診ですが、排便のタイミング、検体の提出に対する抵抗感、精密検査に対する抵抗感などが受診率の改善を妨げているのではないかと思われます。大腸がん検診の現状や今後の可能性についてもお話したいと思います。

精度上がった胃がん検診

鳥取県では胃がん検診として胃X線検診と胃内視鏡検診が行われています。胃X線検診では造影剤や撮影方法の工夫で精度を向上させていますし、胃内視鏡検診では従来の「胃カメラ」のほか細径の内視鏡を使った「経鼻内視鏡」も可能になり選択肢が広がりました。ヘリコバクターピロリ感染症(ピロリ菌)と慢性胃炎の程度を判定して胃がんのできる危険度を考慮した検診も現在検討されているところです。胃がんの早期発見、早期治療を目指して必要な検査を適切なタイミングで受けていただくことが必要と考えています。胃内視鏡検診はがん発見率が高いとされるものの、「死亡率減少効果」を証明するデータがありませんでした。厚生省の研究班で鳥取県での胃内視鏡検診のデータを含めた検討が行われました。その結果も含め現状と今後の可能性についてお話ししたいと思います。