保健の窓

更年期女性の健康管理―更年期をすこやかにすごすために

鳥取市立病院産婦人科診療部長 佐能 孝

 

女性は、思春期にいわゆる女性ホルモンの影響で、月経の開始、女性としての丸みを帯びた体型へと劇的な変化を迎えます。その後、20~30歳代に妊娠分娩を経験し、40歳代後半から更年期に入り、卵巣機能の衰えとともに、のぼせ、発汗、不眠、イライラ、冷えなどの症状が出て、体の不調を感じるようになってきます。家庭内でも子供の独立、勤労婦人の場合中間管理職として微妙な立場であり、家庭でも職場でも孤立感とストレスを感じ、体調不良をよりいっそう感じるようになります。男性にも、女性に比べ症状は顕著ではありませんが、自律神経系の障害による同様な更年期の障害はあります。女性も男性も人として生まれたからには、更年期は加齢とともに誰もが通過するトンネルです。どうしても通過しなければならないトンネルならば、更年期をどう過ごすかが最も重要な課題です。さまざまな症状が更年期には出てきますが、日常生活に支障をきたす場合には更年期障害として治療の対象になります。

以前は、皆が通るトンネルだから我慢することがあたりまえとされてきましたが、最近では我慢することなく積極的に対応(治療)することが試みられるようになってきました。

治療法としてまず大切なことは、自分の現実の年齢を受け入れ「更年期」であると自覚することが重要です。「自分が更年期である」ことを受け入れることは難しいことですが、受け入れることが治療の第一歩です。男性、女性ともに更年期の障害(症状)があることをお互いに理解し、パートナーに思いやりをもって生活することが重要です。症状が強い場合には、病院を受診し相談し治療を受けるようにしてください。

女性の更年期障害のさまざまな症状は、卵巣機能の衰えにより自律神経系の乱れが原因ですので、治療法として卵巣ホルモンの補充療法が選択されます。卵巣のホルモンは、2種(エストロゲン、プロゲステロン)があり、通常2種類投与されます。内服薬が選択される場合が多いようですが、最近は、皮膚に貼り皮膚からの薬の成分を吸収させる「パッチ薬」が用いられることもあります。ホルモン補充療法は、骨粗しょう症の予防にも有効です。また、のぼせ、発汗等の自律神経系の症状に対し、自律神経の調節を保つ薬剤、不眠、イライラに対し、入眠剤や安定剤が投与されることもあります。漢方薬が使用されることもあります。さまざまな症状に対し、いろいろな薬剤が使用されます。薬剤には当然副作用も伴うことがありますので、どういった治療法を選択するかは、担当医師と充分相談し納得して治療を受けることをお勧めします。

また、40歳代後半から、体力の衰えを感じ、「癌」が心配になる頃です。婦人科領域の癌としては、子宮頚癌 子宮体癌 卵巣癌があります。定期的な検診を受けることをお勧めします。また、他の臓器ガン(乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌等)に対しても定期的な検診を受けられることをお勧めします。現在では、癌は早期発見早期治療ができればけしてこわい病気ではありません。定期健診は、生活習慣病の予防にも有効です。

更年期の症状を我慢することなく症状を軽減し、定期的な検診を受け、パートナーとともに精神的にも身体的にもすこやかに更年期をのりこえ、楽しく充実した人生を送られることをお勧めします。一人であれこれ悩むことなく産婦人科をとりあえず受診して相談してみてください。