保健の窓

新学期と不登校

鳥取県立精神保健福祉センター 原田 豊

「区切り」と無理しないで

4月になると、不登校の子どもを持つ親御さんの中には、何とか、新学期をきっかけに学校に行ければと思われることが良くあります。親御さんの不安な気持ちを考えれば、それを期待されるのもごく自然のお話ですが、基本的には、4月をきっかけに、とあまり無理して考えるのはやめましょう。

不登校の子どもが再登校するのは、徐々に心身のエネルギーが回復してきて、対人恐怖なり、場面恐怖なりがそれなりに落ち着いて来てからです。再登校は、別に4月で無くても、6月でも、7月でも、するときはします。回復のペースを無視して、「4月が良い区切り」と言うのは大人の考えです。無理の無いように、大きくペースを変えないように行くことにしましょう。

それに、4月は、担任も、クラスも、随分と環境が変わるので却ってストレスに感じることもあります。「4月から出ないと、後々出づらいですよ」と言われる先生もおられますが、さほど根拠はありません。もちろん、4月から完全復活した子も多々経験していますが、それは、きちっと回復していたからで、それがたまたま4月のタイミングだったと言うだけで、すべての子どもに通じるものではありません。

間違いメール事件

高校2年の不登校がちの息子を持つお母さん。子どもの前では冷静に振る舞うものの、内心穏やかではありません。今日も学校を休みました。イライラを抑えきれず、仕事中の父親に、「今日も息子は学校を休みました。イライラするっ、いい加減にしろと言いたい」とメールを送ったつもりだったのですが、送信ボタンを押した瞬間、送信先が父親でなく息子だったことに気づき、必死でキャンセルボタンを押したものの時すでに遅し、メールは息子のところに飛んで行きました。

その直後の話はとばしまして、ふと、お母さん、自分がどんなに心配しているのかを息子に伝えようと考え、「間違いメール」を装って息子の携帯に、「お父さん、本当は息子のこと信じているんだよ、とても良い子だよね」何て白々しい文章を、いかにも父親宛の様に書いて送りました。

と、お母さんからお聞きしたのですが、子どもがこんな策略に引っかかるわけはありません。起きうる可能性は、
1番、あまりの白々しさに激怒して、また大変。
2番、わざと策略に乗ってくれて、お母さんに優しくしてくれる。

結果は2番でした。まぁ、お母さんの策略の相手ができるだけ、心に余裕ができてきたという所でしょうか。