保健の窓

手のふるえ、足のつまづき -パーキンソン病と関連疾患について-

鳥取大学医学部脳神経内科 准教授 古和久典

原因が異なるパ症候群

 神経内科を受診されたことがなくても、「パーキンソン」という言葉を耳にされた方は少なくないと思います。本来は、パーキンソン病、あるいはパーキンソン症候群と表現して、両者を区別することが大事です。パーキンソン病は、神経変性疾患の1つで、中脳黒質を中心に神経細胞が傷害される、原因が十分に解明されていない病気です。現在わが国の有病率は、人口10万人当たり約150人と考えられています。代表的な症状は、手足の小刻みな震え(振戦)、体のこわばり(固縮あるいは筋強剛)、動作緩慢(無動)とバランス不良(姿勢反射障害)などの運動症状で、4大徴候と呼びます。これらの他にも、便秘、起立性調節障害、嗅覚低下、痛みなどの感覚障害、眠気、抑うつ、精神症状、認知機能障害などを伴うことがあります。パーキンソン病と類似の症状(主に運動症状)を認め、その原因がパーキンソン病と異なる疾患を総称して、パーキンソン症候群と呼びます。お薬によるもの、脳卒中や動脈硬化によるもの、甲状腺機能障害などの内科的疾患、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などの神経変性疾患、本態性振戦などがパーキンソン症候群に含まれます。

 

 

 

 

診断重要、対応異なる

 手のふるえ、足のつまづきなどの症状は似ていても、原因疾患がいずれかによって、治療法や対応、その後の経過が異なってきます。日常生活に障害を感じている場合や、症状が徐々に増悪する場合には、神経内科外来を受診されることをお勧めします。初期のパーキンソン病症状の特徴は、左か右か一側性のことが多く、左右差が目立ちます。震えの特徴は、安静時や歩いている時に認められ、周りの人から指摘されることもあります。逆に、箸を使ったりお椀を持つ際には震えで困ることはほとんどありません。歩きかたの特徴は、姿勢が前屈みになりやすく、左右の足をするようにし、歩幅も小刻みになります。症状が数日や数週で増悪することはなく、年余の経過の中で4大徴候が目立つようになってきます。外来では、運動症状の経過やその他の症状の有無を伺って、診察所見と合わせた上で診断します。状況に応じてパーキンソン病治療薬を開始しますが、初期にはパーキンソン症候群と見分けがつきにくいこともありますので、血液・髄液検査や画像検査をする場合や、しばらく経過を見させていただき、より詳細な評価が必要と判断した場合には短期入院していただくこともあります。