保健の窓

変形性膝関節症

鳥取赤十字病院整形外科 岸 隆広

進行の程度で違う治療法

加齢に伴って膝の関節も老化します。関節の軟骨がすり減ったり、骨が変形したり、水がたまって腫れたりするようになり、痛みを生じます。中高年の膝の痛みのほとんどはこの「変形性膝(ひざ)関節症」によるものです。国内の調査では、変形性膝関節症は男女とも四〇歳代からみられはじめ、七〇歳代では女性の五〇~六〇%、男性では二〇~三〇%にみられます。患者数は国内に一〇〇〇万人以上いると推測されています。女性は男性の一・五倍以上で、体重の重い人、O脚の人はなりやすく、進行もしやすい事がわかっています。

中高齢者で、膝を動かした時に痛む、曲げ伸ばしがつらい、膝が腫れる、膝が変形する(O脚になる)、などの症状がみられた場合は、変形性膝関節症の可能性が高いです。専門医である整形外科医を受診し、診察やレントゲン検査を受け、自分の膝の状態を知りましょう。たとえ変形性膝関節症と診断されても、高度に進行する人は一〇~一五%程です。進行の程度によって様々な治療方法があり、早期に対処すれば進行を遅らせることも可能です。「老化だから」と放っておくのではなく、専門医に相談しましょう。

治療法は専門医と相談

変形性膝関節症は、現在の医学では変形した軟骨や骨を元通りに治すことが不可能なため、残念ながら治療しても完治には至りません。膝の痛み、腫れ、曲げ伸ばしのつらさなどの症状を改善したり、病気の進行を出来るだけ遅らせることが治療の主な目的です。まず、飲み薬や貼り薬などの薬物療法、運動療法、装具療法、関節注射などを行います。ヒアルロン酸を関節内に注射する方法は、関節の働きを改善し、炎症を抑え痛みを和らげます。しかし軟骨のすり減りや骨の変形が高度の場合はこれらの方法では効果がないこともあり、手術が必要になります。

手術は、変形性膝関節症の進行の程度によっていくつかの方法があります。関節鏡を使用して軟骨のささくれやかけらを取り除く方法や、O脚の人には骨を切って角度を変えてO脚を矯正する方法、痛んだ軟骨や骨を切除し人工の関節を入れる方法などが主なものです。現在では、いずれの手術も早期に歩行訓練が開始できるようになっており、入院期間も短くなっています。それぞれ一長一短があるため、自分の年齢やライフスタイルなども考慮することが大切であり、専門医との相談が必要です。