保健の窓

地域で支える脳卒中医療

鳥取県立中央病院 神経内科 部長 中安弘幸

地域で支える脳卒中医療

 脳卒中は早く治療しないと後遺症を残す率が高くなりますし、逆に早く治療が出来れば後遺症を残さずに、あるいは軽減できる可能性がある病気です。従って、顔が曲がる、呂律が回らない、片側の手足の麻痺などがあればすぐに病院に行ってくださいとのキャンペーンがなされておりますし、多くのかかりつけの先生もそのような注意を払っておられます。 また、2005年からは脳梗塞における詰まった血栓を溶かす血栓溶解剤(t-PA)が保険適応となっておりますので、とにかく早く病院に来ていただくということが大切です。それをより確実にするために、最近では消防署と救急病院が連携しております。これを脳卒中病院前救護と言います。鳥取県では東部で2011年より運用が開始され、2013年からは全県に広がっております。救急隊が患者さんのもとにかけつけた時に血栓溶解療法をすることが出来るかどうかということを判断し、適応がありそうであれば、血栓溶解療法の出来る病院に出来るだけ早く搬送するという体制が取られるようになりました。まだ十分ではありませんが、少しずつ脳卒中病院前救護を進め、血栓溶解療法の適応のある方については積極的に行って行きたいと当院では考えております。

 

 

 

地域で支える脳卒中医療

 脳卒中で入院された方は麻痺などの脳卒中そのものの症状に加えて、肺炎などの合併症を起こされることがあります。この合併症を出来るだけ少なくし、リハビリテーションを進める工夫がなされております。これを脳卒中ユニットといって、医師、看護師、リハビリスタッフなどの間で患者さんの情報を共有し、最適な治療とケアが出来るように心がけます リハビリには長い時間がかかることもあり、2007年に医療法が改正されるのに伴い、都道府県レベルで脳卒中の地域医療体制つくりがなされ、それを受けて地域の医療連携に関する現場医療機関の集まりが持たれるようになりました。東部では2007年秋からこのような医療機関間の連携が始まり、現在6年目を迎えようとしています。最初は急性期と回復期病院の間だけでしたが、回復期から生活期医療機関/福祉機関への橋渡しが大切だということで少しずつ集まりの輪を広げ、急性期病院から回復期病院、維持期医療福祉機関への医療情報が適切に伝達できるような紹介状(脳卒中連携パス)というものを作って情報の共有を図っております。将来的にはこれらの医療福祉機関が電子的にネットワーク化されると良いと思います。