保健の窓

嚥下障害と食べるリハビリ

鳥取県立中央病院 松田章弘

嚥下(えんげ)って何?

 口から物を食べることは多くの人にとって生活の一部です。普段私たちは意識せず食事を摂り、水を飲んでいます。人が物を食べる時に食物を確認し、口に入れ、噛んで、飲み込むという一連の動作をします。この中で飲み込む動作が“嚥下(えんげ)”にあたります。飲み込む動作がうまくいかないと食物が食道をそれて気管に入り込み誤嚥(ごえん)や窒息が起こる危険性があります。飲み込む力が低下することを嚥下障害といいます。高齢者の肺炎の多くは、加齢による嚥下障害によって引き起こされるといわれています。高齢社会を迎えてその対応が問題になっています。私たち言語聴覚士は食べる力を取り戻すためのリハビリ、訓練の指導を担当しています。嚥下障害の方は医師の処方により言語聴覚士とともに“食べるリハビリ”を行います。訓練の一環として舌や口、喉を鍛える練習を実施します。“食べる”ことは単に栄養を摂ることだけなく、人間の根源的な喜びです。病気や加齢でうまく食べられない状態でもできることがあります。人生の喜びを捨てることがないよう“食べる力”の改善・維持を図っていきましょう。

 

 

 

 

食べるリハビリ

 食べ物が気管に入ることを“誤嚥(ごえん)”といいます。食べることも、歩くことや物を投げることと同じように体の器官が協力しあっています。このバランスが崩れると誤嚥しやすくなります。病気や加齢により免疫や抵抗力がない方が誤嚥を繰り返すと、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を患います。肺炎は日本人の死因第3位(2015年)で、その多くの割合が誤嚥性肺炎といわれています。私たち言語聴覚士は食べる力を取り戻すためのリハビリ、訓練を担当しています。具体的には舌や口、のどを鍛える練習や実際に物を食べる練習をします。普段私たちが口にするような食事でも飲み込みやすい物、飲み込みにくい物があり、誤嚥しやすい方には飲み込みやすい物を用いて食べる練習を行います。食べ方を工夫することによって今まで通りの食事ができる場合もあります。食べることは栄養を取ることであり生活の基本です。また、人にとっては本質的な喜びです。病気を患った方の中には“食べることだけが唯一の楽しみ”とおっしゃる方もいます。そういった方々の気持ちに寄り添い、食べるリハビリを行っていきたいと考えています。