保健の窓

加齢と呼吸器疾患

藤井政雄記念病院院長 星野映治

(上)-慢性閉塞性肺疾患-

加齢は避けられず、また加齢に伴い増加する肺疾患もあります。その中で、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれる一群があり、慢性気管支炎と慢性肺気腫が含まれます。慢性気管支炎は、冬に3ヶ月以上ほとんど毎日痰がでて、それが2年以上連続した場合に診断される気管支の疾患です。慢性肺気腫は、肺胞が破壊され、肺が軟らかく大きくなり、動いたときに息切れがする肺の疾患です。これらは喫煙者の疾患であり、長年の喫煙とともに、加齢に伴い気管支、肺に傷害を起こし、呼吸困難を生じます。高齢社会において、慢性閉塞性肺疾患も増加するかも知れません。その他共通の特徴として、禁煙により傷害の進行の予防が可能である、症状がでた時点では傷害は進行している、在宅酸素療法の適応となりうるという点もあります。呼気一秒量の低下は加齢とともに生じますが、終生臨床的には問題となりません。喫煙との関連では、喫煙者の10-15%は喫煙の影響を受けやすく低下が著しい、喫煙の影響における個人差は連続的に分布している、禁煙とともに加齢による低下速度に戻ることが報告されています。

一秒量は50歳代で年間42ml減少し、一日5本以上の喫煙者ですでに軽い閉塞性障害を持っていた人では80mlと、約2倍の速度で低下します。

すなわち、咳、痰、息切れの進行をくい止めるには、若年時と中年時に肺機能検査を行い、一秒量を測定し、低下が大きい場合は禁煙するのがいいということになります。

加齢と呼吸器疾患(下)-在宅酸素療法-

在宅酸素療法とは、家庭で酸素吸入をする治療法のことで、いまでは、空気中の酸素を濃縮する酸素濃縮器が主体となっており、コンセントからの電気で作動します。

そのほか、外出時などに携帯型の圧縮酸素、あるいは液体酸素も用いられ、外出、旅行が可能となり、QOL向上にも役立っています。さらに、毎日24時間、酸素吸入をすることにより、寿命が延びることが知られています。

それは、酸素不足によって二次的に起こってくる心不全などの合併症が防止されるためもあります。現在在宅酸素療法をうけておられる患者さんで最も多いのは、慢性肺気腫になっている人と、既往に肺結核の治療歴があり、人工気胸術、肺葉切除術、胸郭形成術などを受けた人です。肺結核の既往の場合、肺が瘢痕化・繊維化し、肺が小さく、息切れがし、酸素不足となります。慢性肺気腫では、主に喫煙が原因で肺胞が破壊され、肺が柔らかくなり広がって、息切れが強くなり、酸素不足も生じます。

在宅酸素療法の適応は、安静時でも動脈血の酸素が足りない、あるいは運動時、夜間睡眠中に酸素が不足する人ですから、間質性肺炎、肺ガン、心疾患も含まれてきます。酸素不足の評価には、血液ガス分析を行いますが、非侵襲的経皮的に簡単に行う事も可能です。酸素不足と息切れを結びつけて考える人がありますが、酸素が不足したから息切れがするという考えは正くないようです。

また、健康な人がスポ-ツの後に酸素を数分間吸入するというのも全く意味がないでしょう。在宅酸素療法は、低酸素血症の患者さんが、長期予後とQOLを改善させるためにあるといえます。