保健の窓

健康長寿を支える食事

東部医師会員 松浦喜房

欧風化ががん発症に影響

日本人の平均寿命は男性79.0歳、女性85.8歳(平成18年)と、世界でもトップクラスになっています。健康で長生きすることは多くの方々に共通した願いであると思いますが、将来を考えると心配な兆しも現れています。

国立がんセンターがん対策情報センターによれば、人口の高齢化によりがんの死亡数と罹患数はともに増加し続けているのですが、高齢化の影響を除いても前立腺がん、乳がん、卵巣がん、女性の肺がん罹患率は増加しており、大腸がんも40歳代後半から増加してきています。これらのがんの発症には食生活の欧風化との関連が示唆されています。

また「2007年国民健康・栄養調査」によれば、糖尿病が強く疑われる人は約890万人で、可能性を否定できない人と合計して約2210万人と、5年間で約490万人も増加しています。糖尿病の合併症は、末梢神経障害、網膜症、腎臓障害等が知られていますが、太い血管にも動脈硬化を生じ、心筋梗塞や脳卒中の原因となるといわれています。

昨年からは内臓脂肪蓄積に着目した特定健診・特定保健指導もスタートしましたが、将来にわたっての健康長寿を支えてゆくために、基本的な生活習慣、特に食事について考えることは、誰にとっても必要なことであると思われます。

多様な食品でバランス良く

生活習慣病予防のためにはバランスの良い食事が大切であることはご存知だと思いますが、今回の講演では、その具体的で実現可能な方法について述べたいと思います。

国立長寿医療センターによれば、伝統的な日本の食事が健康長寿食であって、日本人が長生きであることの要因のひとつであるといわれています。日本の食事には、米飯の「主食」、味噌汁や吸い物の「汁」、魚や肉の「主菜」、野菜を主体とした「副菜」というパターンがあります。先進諸国のなかでは脂質の量が少なく、その結果、心臓病にかかる人が少なくなっています。また豊かな海産物に恵まれており、塩分過剰やカルシウム不足に注意すれば、多くの食材により理想的なバランスになります。

朝食の欠食、野菜不足、食塩や脂肪の過摂取といった問題が取り上げられているなかで、誰もが知ってもらいたい、食事の望ましい組み合わせやおおよその量をわかりやすく示した「食事バランスガイド」について説明します。

食卓は家族ふれあいの場です。外食や加工食品・調理食品が増えつつある現状のなかで、それらと手作りのものをどのようにして組み合わせるか、また上手なお酒の飲み方についてもお話したいと思います。