保健の窓

健康寿命を延ばすために

烏取市立病院 香川洋平

ロコモティブシンドロームって?

 整形外科というとみなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?捻挫・打撲・骨折などの外傷疾患、膝関節痛・肩こりなどのような関節疾患、腰痛・しびれなどの脊椎疾患などさまざまあると思います。最近ではこれらの骨・関節・筋肉・神経など身体を支えたり動かしたりする組織・器官を総称して運動器と呼ぶようになり、運動器の疾患を取り扱う科というのが整形外科になります。運動器の疾患は仕事や日常生活動作、スポーツ動作を困難にし、私たちの生活の質(QOL)を低下させる一因となります。また運動器の問題により、介護が必要になってきた状態のことをロコモティブシンドローム(運動器症候群)といいます。整形外科では2010年から2020年までの10年間を運動器の10年と位置づけ、啓蒙運動を行っています。ロコモティブシンドロームはメタボリックシンドローム・認知症と並んで、QOLやADLの低下、要介護へと繋がる原因となります。ロコモティブシンドロームを認知し、それに対する予防法を知ることで、今後訪れるであろう要介護生活への不安を取り除くことが可能と考えられ、その一助になることができればと思っています。

 

 

 

 

健康寿命を考える

 「健康寿命」という言葉を知っていますか?ご存知の通りわが国の平均寿命は年々延び、世界でも有数の長寿国であります。世界に誇れる素晴らしいことではありますが、平均寿命だけが重要でそれが全てというわけではありません。単なる寿命だけではなく、健康寿命の重要性が指摘されるようになってきています。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことです。平均寿命と健康寿命との間には、男性で約9年、女性で約12年の差があります。つまりその期間はなんらかの身体的不自由や障害があったり、介護を要したりする期間ということになります。介護が必要になる原因としては脳血管障害や衰弱などさまざまなものがありますが、その中でも運動器の障害によるものが25%と最多です。脳血管障害や高齢による衰弱による要介護と比較し、運動器疾患はある程度避けることが可能と考えられます。運動器の疾患とその予防策について認識し、人生の最期のときまで自分の足で歩き、健康でいきいきとした生活を送れるように…。健康寿命を延ばしましょう。