保健の窓

健やかな身体と心を保つために

栄町クリニック 院長 松浦喜房

運動でがんも予防

 運動不足と食生活の欧米化が原因でメタボリック症候群が増えています。運動で内臓脂肪が燃焼して、糖尿病、高血圧、高脂血症という生活習慣病が改善できます。その結果、動脈硬化が原因でおこる心筋梗塞、脳梗塞や下肢の閉塞性動脈硬化症を防ぎます。一方、運動不足は動脈硬化を進行させるほか、骨が弱くなり、また転倒もしやすく、その結果骨折により動けなくなって、生活習慣病が悪化するという悪循環を生じ、生活の質を低下させます。


 余暇を利用して週3日以上運動する人は、月3回以内の人と比べると27%乳がんになりにくく、とくに肥満傾向のある人では35%、女性ホルモン受容体を持つ乳がんに限っては57%も危険度が低下することがわかりました。結腸がんについても、身体を動かす習慣のある人は42%危険度が低くなるといわれます。子宮体がん、肺がん、前立腺がんでも、運動習慣により危険度が下がるというデータがあります。ある会社では、運動不足グループは、積極的に運動するグループの4倍もがんになり易かったのです。

 

 さて、鳥取県民にとっては気になる報告があります。全国で最も日々の歩数が少ない一方、がんによる年齢調整死亡率は全国4位というものです。なんとかしなくてはいけません。

 

 

 

運動で心も健康に

  運動でベータエンドルフィン、セロトニン、ノルアドレナリンという精神状態に良い神経伝達物質の産生が促され、毎日20分以上運動している人は、そうでない人に比べ1年後に抑うつになるリスクは半分といわれています。部活をしている高校生のメンタルヘルスも改善されると報告されています。また仕事のストレスが強い人ほど、週1回以上余暇の運動を積極的に行うことが効果的です。神経すり減らすより、靴底を減らした方がいいかもしれません。


 努力しなくても健康は当たり前、そう思われる方はいませんか?そんな方のためにも、健康づくりは楽しむべきものです。でも運動がいいとわかっていても、なかなかできないのはなぜでしょう?時間がなく疲れていて面倒、運動する環境がない、仲間がいない、もっともです。少しずつでも運動を続けてゆくには、楽しくスポーツ(遊び)する心を持つことが必要です。そして継続すれば、自分の可能性に驚きが生まれ、ますます楽しくなります。ご近所で誘い合わせたり、仲間を作ったり、そして少し頑張れば手が届く目標を持ちましょう。基本はウオーキングとストレッチです。また日常の動作のなかでちょっと工夫して活動量を増やしてゆくことも有効です。