保健の窓

乳がんの予防について

鳥取赤十字病院第二外科部長 工藤浩史

 

食生活の欧米化とともに乳がんの罹患率、死亡率が増加しています。これらを減らす予防法がないものだろうかと誰しも考えることでありますが、言うは易しの感があります。

そこで、乳がん患者様を分析し、どのような条件を持った女性が多いか検討されています。それによると食生活では肉類を毎日食べる、動物性脂肪を多く取る、緑黄色野菜や果物をあまり食べないなどが危険因子としてあげられています。ホルモン環境からみると初潮が早く閉経が遅い、未婚あるいは晩婚の女性、出産の経験がないか1人しか生んでいないなどが危険因子としてわかってきました。しかも、栄養の向上とともに肥満の女性が増えてきており、特に閉経後の肥満が危険因子とされています。また、社会構造の変化による女性の高学歴、高収入化も乳がんの危険因子とされています。生活習慣では運動および喫煙とアルコールがあげられます。喫煙との関係ですが、肉類を毎日食べ、しかも喫煙(受動喫煙も含む)している人ほど危険性が高いとされています。アルコールについては毎日飲む人は危険性が高いとされています。運動を適度にする人は危険性が低いといわれていますが、これは肥満を予防するからかもしれません。

以上のような危険因子から乳がんの予防を考えますと肉や動物性脂肪を摂りすぎず、緑黄色野菜や果物を多く取るなどバランスの良い食生活をする必要があります。そして、早めに結婚し、2人以上の子供を生み、酒、タバコは控えめにすると良いでしょう。適度の運動をして肥満を予防することも大切です。さらに、社会参加によるストレスを軽減すれば乳がんの危険性は低下し、予防も可能かもしれません。


 

乳がんは早期発見すればほぼよくなります。しかも、体表面ですので、自分で見つけることができます。たとえば、しこりが2cm以下で、腋の下のしこりがないものでは10年生存率が80%以上で、ほぼ治癒します。また、しこりがまったく触れないうちに見つかればほぼ100%よくなります。そこで、本稿では乳がんの早期発見について少し述べてみたいと思います。  乳がんの早期発見で大切なことは定期的な自己触診と検診受診であります。まず、自己触診ですが、月に1回は自分で乳房を触りましょう。生理のある方は生理が始まって1週間目くらい、乳房が柔らかくてわかりやすいです。触り方はいろいろですが、イラストのような方法でよいでしょう。しこりを見つけたら、それがすべて乳がんではありませんので、怖がらずに最寄のかかりつけ医に相談して精密検査医療機関に紹介してもらってください。これがもっとも大切であり、怖がって放置することが一番危険です。

次に定期検診ですが、昨年度までは視触診のみの検診が主でしたが、今年度からマンモグラフィ併用検診が全県下で実施されることとなりました。2年ごとに受診して頂きます。この方法ですと視触診ではわからない超早期のがんすなわちほぼ100%よくなるがんの発見も可能です。その反面、要精検率も少し増えるかもしれませんが、医療者が経験を重ねれば、精度が向上し、これも減るでしょう。

これからの検診は超早期のがんを発見し、死亡率の減少を目指した検診です。そのためには検診受診率と精検受診率を向上させなくてはいけません。皆様が自分の乳房に関心を持って自己管理して頂くことが大切であります。