保健の窓

中高年からの皮膚疾患

東部医師会員 葉狩良孝

 

加齢に伴い体には老化を生じてきます。皮膚の老化はもっとも日常的に感じられるものの一つであり、皮膚そのものの変化で起こるものと、全身の老化の影響で皮膚に現われるものに大別されます。このような皮膚の老化を背景にして、さまざまな皮膚の病気が起こります。これらの中で代表的な皮膚の病気についてお話致します。

第一にお話をするのは乾燥肌です。冬場は空気が乾燥してきますので、どなたでも多かれ少なかれ皮膚は乾燥しますが、高齢の方では乾燥が強くなります。皮膚の乾燥を防いでいるのは、皮膚のもっとも表面にある角層という部分です。乾燥肌の対策には、角層の仕組みを知り、乾燥肌の成り立ちを知ることが役に立ちます。

角層はレンガとモルタルに例えられる構造をしています。レンガに相当するのは皮膚細胞の死骸でケラチンという強固な塊です。これは皮膚に加えられる力に対する防御を担当し、非常に強固な物質なのでほとんど物質を透過しません。このため皮膚の吸収作用や水の出入りはモルタルに相当するレンガとレンガのすき間で行われます。

このモルタル部分にはセラミドという物質が存在します。皮膚の水分はセラミドに結合することにより、皮膚にとどまることができます。すなわち、セラミドという物質こそが皮膚の保湿の主役なのです。

皮膚の老化とともにセラミドは減少していきます。このため老化した皮膚では水分を皮膚に留めることができず、外気の乾燥につれて乾燥肌となるわけです。乾燥肌は皮膚のかゆみの原因となり、やがて湿疹を生じてきます。

したがって乾燥肌を予防するにはセラミドの代用となる成分を含む保湿剤を外用するのがもっとも効果的となります。


 

皮膚の老化の二番目は、皮膚の腫瘍(できもの)です。皮膚の腫瘍にはたくさんの種類がありますが、このうち顔にできる黒い腫瘍を取り上げます。これらは長期間あびた紫外線と体の抵抗力(免疫)の低下が原因で生じてきます。

顔の黒い腫瘍には、老人性のいぼ、基底細胞がん、ほくろのがん(黒色腫)があります。老人性のいぼは実際には30代から生じ始めます。表面がざらついて、針の先ほどの小さな孔が見えることが多いのが特徴です。これは完全に良性の腫瘍です。基底細胞がんは、鼻や目の回りにできる腫瘍で、表面はざらつかず蝋のような光沢を示します。この腫瘍はがんの一種ですが、転移を起こすことはほとんどないので残さず取りきれば治癒します。最後のほくろのがんは、ほくろからできることはむしろ少なく、多くは何もない皮膚にできてきます。色むらや、いびつな形をとることが特徴です。この腫瘍は転移も起こしやすく三者の中ではもっとも悪性度の高い腫瘍です。顔の黒いできものの診断は、この三者を選別していくことに尽きます。自己判断は危険なことがありますので、専門医の診察や検査をうけることが必要です。

第三に、全身の抵抗力の低下にともなって感染性の病気を起こします。代表的なものは帯状疱疹です。この病気の本体は水ぼうそうのウイルスです。水ぼうそうにかかると、そのウイルスは脊髄の近くに潜伏します。通常は体の抵抗力がこのウイルスを封じ込めていますが、それが弱まることによりウイルスは神経に沿って皮膚に現われ、その神経が分布するところに帯状に水疱を作ります。これに伴って神経痛が起こります。皮膚の症状と痛みの両方を治療することが必要となります。(東部医師会員)