保健の窓

ロコモティブシンドロームとは

鳥取県立中央病院整形外科部長 山本哲章

運動器低下で要介護

メタボという言葉は有名ですが、これは内臓脂肪型肥満で高脂血症、高血圧、高血糖をおこし、心臓病の危険が高い状態のことをいいます。それに合わせて、骨、関節、筋肉などの運動器の能力が低下することで、生活の自立が難しくなり、要介護や、寝たきりとなる可能性が高い状態を、日本整形外科学会は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)と名付けました。

ロコモの診断項目は、『①片脚立ちで靴下がはけない。②家のなかでつまずいたり滑ったりする。③階段を上るのに手すりが必要である。④横断歩道を青信号の間に渡りきれない。⑤15分くらい続けて歩けない。』の5つがあり、これが1つでもあてはまるとロコモと診断されます。自分は大丈夫と思っていても、この項目のいずれかに当てはまる人は意外と多いのではないでしょうか。ロコモと診断される状態であると、運動器の能力が衰えはじめているということになります。これからの高齢化社会に向け、寝たきりにならないためにも、自分の運動機能の状態をあらためて確認しましょう。すこしでも衰えを感じたら、運動習慣を身につけましょう。メタボだけではなくロコモにも十分注意をしましょう。

簡単な運動で転倒予防

近年、高齢化社会に伴い、介護を必要とする高齢者が増えてきています。その原因として、多くは脳卒中、認知症があります。そのほか約1/4は、関節の痛み、転倒による骨折、および腰痛などの運動器による障害が原因です。日本整形外科学会はこれに注目し、運動器の障害により介護が必要になりそうな状態をロコモティブシンドロームと名づけ、日々の運動活動を推奨しています。

その中で、自宅で簡単に行える転倒予防の運動を紹介します。1つは『ダイナミックフラミンゴ体操』です。目は開けたままで、片方の足を床からわずかに上げ、片足立ちをします。左右1分間ずつを1日3回行います。無理な人は、はじめは何かにつかまりながら行ってください。もう1つはスクワット運動です。肩幅くらいに足を広げ、膝を90度以上には曲げないようにしてゆっくりと椅子に腰かけるようにしゃがみこんで、また立ちあがってください。無理な人は椅子に座ってから、ゆっくりと立ち上がるようにしてみてください。続けて5~6回程度を1日3回行います。このように自宅で出来る簡単な運動から徐々に行ってみましょう。運動習慣を身につけ、将来寝たきりにならないように努力しましょう。