保健の窓

リウマチ医療はこんなに変わった~我慢する時代から治る時代へ~

鳥取県立中央病院 整形外科 部長 山本哲章

「我慢する」時代から「治る」時代へ

 関節リウマチは約200人に1人の割合で発病し、決して珍しい病気ではありません。その原因は、体の抵抗力をつかさどる免疫に異常が生じ、本来なら出来るはずのない自分の関節の滑膜の対する抗体が産生され、勝手に滑膜が障害されることです。以前は関節リウマチをいったん患うと、徐々に関節が障害され寝たきりとなってしまう絶望的な病気と理解されていました。しかし15年前にメトトレキサートの服用が開始され、さらに生物学的製剤の開発により関節リウマチの進行をとめ、治療が早ければ治る時代と変わりました。生物学的製剤とは最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発され、生物が産生した蛋白質を利用して作られた注射剤です。現在日本で使用できる生物学的製剤は7種類あり、その中に日本で開発されたものもあります。さらに昨年より分子標的薬で生物学的製剤と同等の効果がある内服薬も登場しました。今後もさらにいろいろな薬が開発されていく予定です。ただこれらの薬は体の免疫を変化させる薬であり、体の抵抗力を低下させたりして感染症などの副作用を起こすこともあり、治療において十分な注意が必要です。

 

 

 

手軽な超音波検査も

 関節リウマチはどこかの関節の滑膜が炎症を起こして腫れあがっている病気です。特に手足の指の関節に起こりやすいのですが、診断はこの腫れた滑膜を見つける事から始まります。以前は手で触って滑膜の腫れを見つけていたのですが、近年MRIによりわずかな腫れでも見つけることが可能となりました。しかしMRIは設備も時間もかかります。これに変わり手軽な超音波検査が出てきました。これはお腹の検査や産婦人科の検査でよく使われている機械と同じものを使います。超音波によりわずかな滑膜の腫れを見つけることが可能で、さらに滑膜の微細な新生血管をシグナルで描出し病気の活動性もわかります。また血液検査の方でも抗CCP抗体が登場しました。以前よりリウマチ因子がありましたが、これは正常の方でもかなり陽性となるので、リウマチ因子陽性だけで関節リウマチとは診断出来ません。しかし抗CCP抗体は比較的関節リウマチに特徴的でこれが陽性の場合は9割以上の確率で関節リウマチと診断が出来ます。最近はMRI、超音波や抗CCP抗体などで、早期に関節リウマチの診断が可能となってきています。