保健の窓

メタボリック症候群について

鳥取大学医学部統合内科医学講座病態情報内科学分野准教授 谷口晋一

 

平成20年度からはじまった特定健診(メタボ健診)は、40-75歳を対象にメタボリック症候群を中心とした動脈硬化予備群を早く発見して将来の心筋梗塞・脳梗塞を予防するというねらいではじまりました。

メタボリック症候群は、血糖値・血圧・脂質などの異常が発生し、年齢よりも早く動脈硬化が進行してしまう状態です。腹囲が男性85cm女性90cm以上、さらに①空腹時の血糖110mg/dl以上②血圧130/85以上③中性脂肪150mg/dl以上またはHDLコレステロール40mg/dl未満のいずれか2つ以上を満たす人をメタボリック症候群としています。平成16年の国民健康栄養調査によると、40-75歳の年代で、男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリック症候群かその予備群となります。

内臓脂肪が蓄積することが、なぜ動脈硬化につながるのでしょうか?内臓脂肪は単に脂肪を蓄えるだけでなく活発にホルモンを分泌しています。血管を汚れにくくするアデイポネクチンのような善玉もいれば、TNF-α(血糖値をあがりやすくする)などの悪玉ホルモンもいます。内臓脂肪が増えてくると、善玉が減り悪玉が増える方向へ変化し、糖尿病・高血圧・脂質異常などを起こし、動脈硬化が進みやすい体内環境となってしまうのです。

腹八分目の実行から

メタボリックと診断されたらどうしたらよいのでしょうか?内臓脂肪は皮下脂肪に比べて「たまりやすいが、燃焼しやすい」という性質があります。生活スタイルを改善することで内臓脂肪を減らすことは十分に可能です。「体を動かす機会・時間を増やす」だけでも大いに効果があります。車通勤して事務作業のみの人では、一日4000歩がせいぜいですので、「エレベーターをつかわず階段で」など、日常生活で工夫するという感覚が大切です。万歩計を使って一日歩数をはかってみるのもよい方法です。10分歩けば約1000歩=30kcalの消費となります。

メタボの人の食習慣として、「腹いっぱいたべる」「早食い」「甘いもの大好き」などがあります。腹八分目など、ひとつの目標を作って実行してみることからはじめましょう。日本人は以前に比べて砂糖・脂分の摂取量が増えています。レトルト・外食も時々は利用しつつ和食を中心にした食事がポイントです。これは、メタボ対策だけでなく、糖尿病や高血圧予防にも役立つ食生活です。腹囲の改善とともに血圧・血糖値・中性脂肪など代謝面でもよい傾向を示すようになります。特定健診(メタボ健診)を上手に使って、健康な生活が続けられるように工夫しましょう。