保健の窓

ピロリ菌について分かっている事~いない事

鳥取市 おかだ内科 院長 岡田克夫

ピロリ菌についてご存知ですか?

 ヘリコバクターピロリという細菌をご存知でしょうか。すでに感染を指摘されて除菌治療を受けられた方もあるかもしれません。通称ピロリ菌は様々な胃の病気に影響を及ぼしていることが分かっていますが、発見されたのは1982年と比較的最近の事です。まだ解明されていない部分も多い細菌です。まず、胃・十二指腸潰瘍の原因になっていることが明らかになり、平成12年に除菌治療が認可されると再発が激減しました。胃癌への影響が明らかになり、平成22年には早期胃癌の内視鏡治療後にその後の発癌を抑制する為の除菌治療が認可されました。平成25年には発がんの背景となる萎縮性胃炎も除菌の対象に追加され、内視鏡検査で確認した上で除菌治療を受ける方が増えています。除菌治療は抗生物質を使った治療です。抗生物質に抵抗力を持つピロリ菌が増えており除菌成功率は年々下がっていましたが、薬の組み合わせを工夫してやや改善し90%程度と言われています。二回目の治療も認められていますが、それでも残ってしまう事があります。また、抗生物質に対するアレルギーをお持ちの方は治療ができない場合もあります。感染の有無を含め一度確認することをお勧めします。

 

 

 

 

ピロリ菌について分かっていない事

 ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の除菌治療が広く行われるようになりましたが、感染しているかどうかの確認には現在の所、内視鏡検査が必須です。内視鏡の所見をもとに、採血でのピロリ菌抗体価の測定などよってピロリ菌の現在の感染や過去の感染の有無を判断していきます。採血で抗体価が低くても過去の感染の可能性は否定できません。内視鏡で胃炎の変化が認められる場合は一定程度の胃がんのリスクはあると考えられます。また、胃炎の変化が強くなりすぎると抗体価が低くなる事があり胃がんのリスクがより高いと判断されます。ペプシノーゲンというホルモンを測定することで胃炎の程度を判断して胃がんのリスクの程度を分類する事も提唱されていますが、採血だけで全ての事が分かるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。さて、ピロリ菌はどこから来るのでしょう。幼児期の経口感染であることはわかっていますが、衛生環境の良くなかった頃には汚染された水や食物が主な原因であったと思われます。現在のような衛生環境の良い時代になっても感染率がゼロにならない事より家族からの感染(離乳食の口移しなど)も原因の一つと考えられています。