保健の窓

タバコと生活習慣病 – 禁煙・分煙のコツ –

安陪内科医院院長 安陪隆明

 

「タバコが健康によくない」ということは、ほぼ常識化してきた感があるのですが、にもかかわらず、我々の身の回りのタバコ対策はまだ到底充分とは言えない状況にあります。男性喫煙者では非喫煙者と比較して標準化死亡比で、肺癌 4.45倍、喉頭癌 32.5倍にもなります。その他、慢性気管支炎、肺気腫、心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症、脳血栓などの疾患の原因となり、WHOによると、1995年の時点で日本で喫煙が原因とされた死亡数は95,000人であったと推計されています。

「私は早死にしてもタバコはやめない。吸いたいものを吸って短く太く生きる」という方は仕方がない(?)のですが、そういう方にも知っておいていただきたいのは、喫煙はその本人だけが健康被害を被るのではなく、その周囲の人間、子供達、配偶者をも巻き添えにするということです。例えば、夫の喫煙により、喫煙しない妻が肺癌になる相対危険度は1.3~1.5倍ということが報告されています。また親が喫煙者であると、呼吸器疾患の罹患率、有病率の増加、呼吸機能の低下、発がん、身体発育への影響などがあると報告されています。

それではこのような受動喫煙による健康被害を防ぐにはどうしたらいいでしょうか。よく「空気清浄機」なるものが売られおり、塵成分が吸収できるため一見空気が綺麗になったように見えるのですが、このような機械では一酸化炭素等のガス成分は素通りしてしまい、健康を守るためには充分ではないことが、厚生労働省の「分煙効果判定基準策定検討会報告書」でも明らかになっています。この報告書では「屋内に設置された喫煙場所の空気は屋外に排気する方法を推進することが最も有効」とされています。

次回は「本当の分煙」と「禁煙」のコツについて説明したいと思います。