保健の窓

サプリメントの正しい知識

鳥取大学医学部薬物療法内科教授 長谷川純一

サプリメントとは何か

 新聞、テレビ、ネットや週刊誌などあらゆるメディアを通してサプリメントの話題が取り上げられています。身体への何らかの機能が表示される特定保健用食品「トクホ」が広く知られるようになったところ、思いもよらない清涼飲料の雄コーラにまでトクホ製品が登場し、爆発的な売り上げを記録しているようです。一方、年齢と共に減り続ける身体構成成分の補給をうたった健康食品の宣伝もますます増える一方です。食品といっても錠剤やカプセルなど、医薬品と同じ形状をしていることから、同じ類で理解している方も多いようです。実際、それらの利用者は、健康について何らかの不安を感じている人が多く、さらには予防的に、幼児にまでサプリメントを与えている親も少なくないといわれています。


 古来より「医食同源」といわれ、単に生存のための栄養摂取から、健康維持や病的状態緩和の効果を、食品やその成分であるサプリメントに求めることを否定するものではありません。しかし、何らかの影響が身体にある場合、望ましい方向に作用すればよいのですが、望まない影響がでることもあります。医師の処方薬と異なり、自己責任で摂取するものであり、十分な理解と注意が必要です。

 

 

 

サプリメントの選び方と注意点

  栄養の基本は食事であることを踏まえ、必要な成分が摂取できるよう心がけることが重要です。しかし、昨今の生活環境から、不足しがちな栄養素などを補う意味で、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや、便通によい線維成分などのサプリメントは手軽で重宝するものでしょう。一方、健康診断で指摘されるものの、通院治療するほどでもない軽度の病的状態に、好影響を与えることが科学的に認められているのが、特定保健用食品(トクホ)です。使用上の注意や量を守って上手に利用すると良いでしょう。また、サプリメントには科学的に証明されていないものの、好影響を期待して販売されているものもあります。望ましい影響があれば儲けものかも知れません。

 

 サプリメント摂取で最も気をつける必要があるのは、既に何らかの疾患で医療機関にかかっている方です。食事内容やサプリメントが病気に悪影響を与えることもあれば、処方されている薬の効果を強めて有害な作用になったり、効果がなくなってしまう場合もあり、注意が必要です。サプリメントを使用する場合は、個々人の身体の状態をよく理解し、薬についても専門家である主治医の意見を参考にするのが良いと思います。