保健の窓

ウイルス性肝炎

鳥取大学医学部機能病態内科 孝田雅彦

最新治療で炎症を止める  ウイルス性肝炎(上)B型肝炎

ウイルス性肝炎は最近のマスコミ報道で一般に知られるようになり、本年4月からは国と自治体からの助成制度も始まりました。慢性ウイルス性肝炎にはB型とC型があります。B型慢性肝炎の多くは、母子感染つまり出産時の母親から赤ちゃんへの感染が持続し、慢性肝炎、肝硬変と進行して行きます。しかし、現在では出産時にワクチンを打つことによって予防することができます。

さて、問題は既にウイルスが感染している患者さんです。ウイルスは肝細胞のDNA内にも侵入するため、完全に排除することは困難です。ウイルス自体は肝臓を傷害しませんが、免疫が働くことによって肝細胞を破壊し炎症が起ります。この炎症を止めるためには、免疫力を強めウイルスを抑えてしまうか、ウイルスの増殖を止めてしまうか二つの方法が考えられます。インターフェロン治療は、免疫力を高める方法であり主に若い人に用いられ、新しく登場した核酸アナログは、ウイルスの増殖を止める方法で中年以降の人に用いられます。核酸アナログは長期の内服が必要ですが、肝炎の進行を止めるだけでなく、癌の発生も抑えます。

副作用少ない治療法登場  ウイルス性肝炎(下) C型肝炎

C型肝炎ウイルスの持続感染者は全人口の2%近く存在します。自覚症状がないため血液検査が必要で、ウイルスが陽性であれば肝炎の進行度、ウイルスの型、量を調べた後、治療法を決めます。治療にはインターフェロン(IFN)と抗ウイルス薬のリバビリンの併用が行われます。IFNは副作用が強く、苦しいというイメージがありますが、最近登場したペグインターフェロンは週1回の投与で副作用も少なく、治療効果も高くなりました。

具体的な副作用として発熱や倦怠感などのインフルエンザ症状、発疹、うつ傾向、血小板減少、また リバビリンによる貧血がありますが、薬剤の減量や対症療法によって副作用を軽減し、治療を完遂することができます。C型肝炎では抗ウイルス療法によってウイルスを完全に取り除くことができ、肝炎は改善し、肝癌の発生も著しく少なくなります。一部の患者さんではIFNを終了すると再びウイルスが出現する場合がありますが、この場合でも少量のIFNを長期間投与することによって同様の効果を得ることができます。助成制度を上手に利用し、病状に合わせた適切な治療を受けることが大切ですので、希望を持って専門医に相談してください。