保健の窓

アナタの知らない甲状腺の世界

烏取市立病院 檀原尚典

そもそも甲状腺って?

 『甲状腺』はその形が戦国時代の甲(かぶと=兜)に似ているところが名前の由来となっています。最近では正面から見た形が蝶が羽を広げた姿に例えられることも多く、時代が時代なら『蝶々腺』と呼ばれていたかもしれません。  甲状腺の場所ですが、首をさわると喉仏(のどぼとけ)を触れると思いますが、そのすぐ下にあります。男性は女性よりも喉仏が下にある分、甲状腺も女性より下に位置します。気管を包み込むように存在し、大きさは縦4.5㌢、横4㌢、厚さ1㌢程度、重さは約20㌘の小さな臓器です。 正常の甲状腺は柔らかく、触ってもほとんどわかりません。甲状腺全体が腫れたり、一部にしこりができたりすると触れることができます。大きいものになると見ただけで腫れているのがわかることもあります。 甲状腺内では甲状腺ホルモンが作られます。甲状腺ホルモンは食べ物に含まれるヨウ素を原料に作られ、体内のエネルギー産生や代謝、心臓の機能調節など多くの仕事を担うと同時に、小児期においては体の発育や成長に欠かせない働きをしています。甲状腺は小さな臓器ですが、産生されるホルモンの働きは全身に及ぶため、生命の維持においてとても重要な臓器と言えます。

 

 

 

 

甲状腺の病気って?

 甲状腺の病気は多くありますが、大きく分けると、甲状腺ホルモンが多いか少ないか、しこりが良性か悪性になります。  甲状腺ホルモンが多くなる疾患として、バセドウ病があります。20代~30代の女性に多い病気です。甲状腺に『ホルモンを分泌しなさい』と命令する物質に『似た物質』が体内で作られ、甲状腺が過剰に反応してホルモンを必要以上に分泌してしまいます。ホルモンが多すぎるため代謝が盛んになり、体重減少、汗かき、暑がり、指の震え、動悸などが起こります。  逆に甲状腺ホルモンが少なくなるものでは慢性甲状腺炎(橋本病とも言います)が代表的です。甲状腺が自分のリンパ球で攻撃を受けて組織が徐々に破壊され、ホルモンの分泌が減少します。ホルモンが足りなくなると元気が出ない、寒がり、動作がゆっくりになる、全身が浮腫(むく)む、記憶が悪くなるなどの症状が出ます。慢性甲状腺炎もバセドウ病と同様、20代後半~40代の女性に多い病気です。  しこりの約90%は良性で、たとえ悪性であったとしても、そのほとんどは進行が穏やかで命に関わらないとされています。血液検査、超音波検査、細胞検査などで診断します。