保健の窓

わかりやすいリハビリテーションの話

鳥取生協病院 リハビリテーション科 診療部長 岩田勘司

リハと「障害」

 歴史上、本格的なリハビリテーション(以下「リハ」)の発展は、欧米では第一次・二次世界大戦の戦傷軍人への対策から始まったといわれています。我が国の場合は少し異なり、一九二〇年代に起こった肢体不自由児の療育の思想が基礎となりましたが、いずれにしても「障害をもった人々」との関わりのなかでリハは発展してきました。  二〇〇一年にWHO(世界保健機構)総会でICF(国際生活機能分類)が採択されました。概念の詳細は字数の関係でここでは省略しますが、例えば脳卒中で右側の手足の動きが悪くなった方のリハを行う場合、右側の手足の動きそのものの改善が困難なことがあります。そんなときも、動作訓練・補装具などの工夫で、健常な左側の身体の効率的使用も含め、移動・身の周りの動作を再び可能にし、総体的にその方の生活能力を回復させることを考えていきます。これは現在のリハ支援の基本的な考え方のひとつですが、障害とどう共存するかという考え方が根底にあります。リハ医学は障害に対して専門的知識と技術をもって、正面から向きあう医学ということができます。

 

 

 

 

新たな生活予測し進行

 疾病によって障害を抱えた方のリハビリテーション(以下「リハ」)を行う場合には、リハがいったん終結した段階での、その人の新たな生活スタイルを予測して進めます。これを「ゴール設定」と呼んでいます。 移動・身辺動作能力はもちろんのこと、自宅環境、余暇活動、就業内容など個々人の日常生活は千差万別です。そこで、ご本人・ご家族からご希望(デマンド)をお聞きした上で、ここに実際の機能回復状況や可能な環境への介入(住宅改修、福祉用具選定など)も加味して、客観的に実現と継続が可能な支援事項(ニーズ)に整理・昇華させる作業を行っていきます。ここが、わたしたち支援者側の力量が試されるところです。 もちろん回復が期待されるケースだけではなく、例えば悪性腫瘍の末期の方のように生活期間が長く想定できない場合にも、ニーズをとらえて支援を考えます。  誰でも高齢になれば足腰が衰え「障害者」になります。障害は人により抱える時期が違うだけで、特別なものではありません。人生のさまざまな時期に抱えることになった障害に、正面から向き合い、支援を考えるのがリハ従事者の大きな仕事です。