保健の窓

ゆううつなのはうつ病なの?~現代社会の抑うつ~」

鳥取県立精神保健福祉センター所長 原田 豊

 

そううつ病は、「そう」と「うつ」が見られる病気です。「そう状態」は、そう快な気分の状態ですが、怒りっぽくなったり、イライラが強くなることもあります。「うつ状態」は、気持ちがゆううつで意欲ややる気が落ちてしまう状態です。思考力が落ちると、物事を悪い方へ悪い方へと考えてしまいます。身体が言うことを聞かず、家から出られない状態になることもあり、ゴロゴロしているだけに見えても、本人にとってはとても苦しい状態です。食べ物もおいしくない、夜もぐっすりと寝られない、「うつ状態」は、<う>っとおしくて、<つ>らい状態です。そううつ病の中には、「そう」と「うつ」が繰り返される「双極(そうきょく)性」のタイプと、「うつ」だけが見られる「単極(たんきょく)性」のタイプがあります。この「単極性」のタイプが、一般に「うつ病」と言われるものです。うつ病にとって大切なのは、「薬物療法」と「休養」と「周囲の理解」です。

ところが、「うつ状態」だからといっても、必ずしも「うつ病」であるとは限りません。最近、職場でよく見られるのは、「うつ病」ではなく、「うつ反応」です。仕事の量があまりに多すぎたり、仕事が複雑で慣れない仕事がこなせなくなり、うつ状態になってしまったというものです。表面的には、うつ病と症状はあまり変わりませんが、2週間もゆっくりと休養すると、仕事には向かうことはできなくても、日常生活のことは概ねできるようになってきます。うつ病であれば、仕事だけでなく日常のことも楽しむことはできません。これは、本人が怠けているのはなく、あまりの仕事のストレスで心も身体もついて行くことができなくなったのです。適応障害、パニック障害など、うつ状態は、さまざまな病気や環境において認められ、診断によって、治療や周囲の関わり方も異なってきます。