保健の窓

とても身近なCKD(慢性腎臓病)の話

鳥取大学医学部附属病院腎臓内科 宗村千潮

8人に1人が患者

成20年9月に米子で『CKDって知ってますか?』という演題で公開健康講座を行いました。その時このコラムでCKD(慢性腎臓病)について書かせていただきました。当時はまだあまり普及していなかったCKDという言葉ですが、もう覚えていただきましたか?まずは前回の復習から。

蛋白尿等の腎障害またはGFR(糸球体濾過量;正常値100ml/分)が60ml/分未満の状態が3ヶ月以上続くとCKDということになります。このCKDが注目される理由は2つあって、1つは患者数がとても多いということです。現在わが国では1330万人がCKDに該当すると推定されています。成人の8人に1人がCKD。2つめの理由はCKDの方は心血管病すなわち脳卒中、心筋梗塞、心不全等の合併が多いということです。CKDの方で透析に至る方は1年間に3万8千人程度とほんの一部ですが、はるかに多くの方が心血管病を合併して命を落としています。そんな恐ろしいCKDですが、初期のCKDでは自覚症状はありませんので、まずは健診を受けて、CKDの早期発見、早期治療を行うことが重要になります。

次回は糖尿病を中心にCKDの原因についてお話しします。

糖尿病は腎症の検査を

前回CKDは日本人の8人に1人、1330万人もいるとお話ししました。それではCKDの原因は何が多いのでしょう? CKD全体ではまだよくわかっていませんが、CKDの最も進行した状態である透析を導入した方に限ると、現在は糖尿病が43.2%と最も多く、次いで慢性糸球体腎炎23.0%、高血圧10.5%という順番になっています。健診による早期診断と適切な治療により慢性糸球体腎炎による透析導入は近年減少傾向となっていますが、糖尿病、高血圧由来の透析が増加していることが大きな問題となっています。  なぜ糖尿病由来の透析が増えているかというと、糖尿病自体がどんどん増えているためと考えられます。日本の糖尿病患者数は疑いも含めて平成14年に1620万人だったのが、平成19年には2210万人に増加しています。糖尿病の方は蛋白尿が出始める(顕性腎症)と進行も早く、CKDの治療も効きにくくなりますが、蛋白尿のない微量アルブミン尿のみの段階(早期腎症)で治療を開始すると寛解も得られます。

また早期腎症、顕性腎症と進行するに従い心血管病の合併も多くなります。糖尿病で通院中の方はぜひかかりつけ医で腎症を合併していないかどうか診断してもらってください。