保健の窓

ここまで進んだ肺がん診療の最前線

鳥取大学医学部胸部外科学分野 教授 中村廣繁

期待の最新治療が続々

 肺がんは過去20年以上に渡って増加の一途をたどり、本邦がん死因の第1位で、2012年には71,518人(男性51,372人、女性20,146人)が亡くなっています。特に鳥取県は肺がんの罹患率と死亡率が高く、喫煙率が減少しても肺がんは減っておらず、むしろ喫煙と無関係の肺がんが増加しています。近年の特徴は高齢者肺がん、女性肺がん、早期肺がん、多発肺がん、腺がんの増加ですが、依然として肺がんが最も頻度の高い難治がんであることには変わりありません。しかし一方で、肺がんの診断と治療の進歩も著しく、革新的な画像精度の向上と、気管支鏡診断の発展は治療にも変化をもたらしました。いわゆる“切って(手術)、あてて(放射線)、くすり(抗がん剤)で治す“、という全てにおいて、続々と期待の最新治療が開発されています。手術は内視鏡・ロボット・縮小手術へ、放射線は高性能・ピンポイントへ、抗がん剤は新規・分子標的薬の時代へと、いずれも体にやさしく、効果の高い治療をめざしています。現在の肺がん治療は多様化しており、それぞれの肺がんに対応した個別化治療が重視され、患者さん自らによる治療法選択の時代に入ったといえます。

 

 

 

治療はチーム力が重要

 肺がん治療は進行すれば容易ではありません。よって、まずは予防が大切です。予防には一次、二次、三次予防があります。一次予防は肺がんにならないようにすることで、何よりも禁煙、そしてタバコを中心とした微粒子(PM2.5)を遠ざけることです。しかし近年、タバコとは無関係の遺伝子異常による肺がんが増加しており、適度な運動、ストレス軽減など遺伝子に傷をつけない健全な生活も重要となっています。二次予防は早期発見ですので、検診が大切です。鳥取県の肺がん検診受診率は約25%で、いまだ国の目標値の半分です。検診は肺がん早期発見、死亡率の減少効果が証明されていますので是非受診しましょう。三次予防は肺がん治療をした後の再発予防、早期発見のことで、定期検査が重要となります。最後に肺がん治療の最大のポイントとして強調したいのはチーム力です。医師のみならず、薬剤師、看護師、理学療法士、心理(社会)福祉士などがカンファレンスを通して専門の立場から意見を述べます。肺がんは総合力すなわち集学的治療ができてこそ、病状に応じた適切な治療やケアが可能となるのです。皆さまの病院選びのコツもここにあるといっても過言ではありません。