保健の窓

がんの原因と予防法

鳥取大学医学部環境予防医学分野教授 岸本拓治

【 がんの原因 】生活習慣改善しよう

がんは日本人の死亡原因の31%を占め、年間30万人以上もの方々ががんによって命を失っています。鳥取県においても毎年3千人以上のがん罹患(発生)があります。

これまで、世界中の多くの研究によりがんの原因が明らかになってきています。1996年にアメリカのハーバード大学がん予防センターが膨大な科学論文をまとめて、アメリカ人のがん死亡全体に対して、どのような要因がどのくらいの割合で原因となっているのか推計を試みています。図1に示しましたが、たばこが原因となっている割合は30%で、言い換えると禁煙によりがん死亡が30%減らせると推計しています。また、成人期の食生活・肥満の改善により予防できるがんの割合は30%、さらに、運動不足が関連している座業の生活様式5%、飲酒3%となっていますが、これらは代表的な生活習慣要因であり合計すると68%にもなります。アメリカ人の推計をそのまま日本人に当てはめることは出来ませんが、それにしても、喫煙・食事・運動・飲酒という代表的な生活習慣を改善することにより多くのがんが予防可能であるということは、驚くべきことです。がん予防には、いかに生活習慣改善が重要であるかということを示しています。


 

がんの予防法には、がんの罹患(発生)自体を減らすための対策(第一次予防)とがん検診を充実して早期発見・早期治療を目指す第二次予防があります。まず、第一次予防に関して述べたいと思います。厚生労働省研究班(多目的コホート研究)の調査によると年間約 9万人に、喫煙が原因のがんが発生したと推計されています。がん予防の第一はなんと言っても禁煙です。食事と身体活動に関しては、2003年に世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO)が世界中から多くの専門家を集めて「食物、栄養と慢性疾患の予防」という冊子をまとめて発表しました。その中に食物・栄養を中心に各種要因とがん発生との関連について科学的証拠に基づく評価が示されています。がん発生と「関連が確実」と判定された項目は、「運動」で結腸がんに予防的に働くこと(リスクが低くなる)、「過体重と肥満」で食道、結腸、直腸、乳房(閉経後)、子宮体部、腎臓の各がんに危険要因となること(リスクが高くなる)、「飲酒」で口腔、食道、肝臓、乳房などの各がんのリスクが高くなることでした。また、がん発生と「おそらく関連が確実」と判定された項目は、「野菜と果物」で口腔、食道、胃、結腸、直腸の各がんのリスクが低くなること、「運動」で乳がんのリスクが低くなること、「貯蔵肉」で結腸と直腸のがんのリスクが高くなること、「塩蔵品と食塩」で胃がんのリスクが高くなること、「熱い飲食物」で口腔、食道などのがんのリスクが高くなることなどでした。第二次予防(早期発見・早期治療)については、近年多くのがん検診の有効性が科学的に評価されています。有効性が確認されているがん検診を受診して早期発見・早期治療に努めることが大切です。