保健の窓

がんで泣くより笑って予防

吉中胃腸科医院 吉中正人

検診で早期発見、早期治療

セルフ・セレクション・バイアス(集団の性格の差)と云う言葉があります。

健康に対する自愛の心から進んで検査をうける人、何らかの臨床症状を覚え病院を受診する人、健康に自信があるからからと言って検査を受けない人、この意識の差、受診行動の差が、がんの予後の差となって現れます。

がんは進行度により、Ⅰ~Ⅳの4段階に分類されます。進行度と、がんの治りやすさ(粗生存率)の関係は、Ⅰ期は早期がんで98%、Ⅱ期は進行がんですが72%、Ⅲ期から悪化し43%、Ⅳ期は6%です。がんを治すためには、Ⅱ期より前で見つけてもらうことが必要です。

一方がんの進行度と症状の関係をみますと、Ⅰ期はほとんど症状がなく、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期と進むにつれて症状が強くなります。症状を感じて病院を受診するだけでは、がんで亡くなるのを防ぐことが難しくなります。治るがんは症状が少なく、症状が出てから見つかるのは進行がんが多くなります。

症状の無い時点で、『がん検診』を受け、早期発見、早期治療に努めていただくこが大切です。

QOLにも検診のメリット

がんの自然史は、発がん(細胞レベル)から、早期がん、進行がん、転移、死亡と云う経過をたどります。

早期がんにとどまる期間は、2年とも3年とも言われていますので、遂年検診を受けることにより、早期がんのステージで発見することが出来ます。

治療面で検討しますと、20数年前までは、がんは全て手術されていましたが、最近は早期がんのうち、がんが粘膜内にとどまる、より早期のものに対して内視鏡治療(粘膜剥離術)が出来るようになりました。胃が全部残りますので、QOL(生活の質)を落とすことなく治療が完了します。

早期発見、早期治療のメリットはここでも生きています。

胃がんが存する割合は1000人あたり3~4名と言われています。がん検診は、がんを発見してもらうことから、がんが無いことを確認してもらう事と発想を転換していただき、次の1年、次の1年を安心して生活するためのパスポートと考えていただきたいと思います。