保健の窓

お酒と楽しく付き合うために

渡辺病院精神科 山下陽三

なかなか難しいお酒との付き合い

 縄文時代よりすでにお酒が存在したと言われていますが、人とお酒との付き合いはとても古くからあります。なぜ、人がお酒を飲むことを好むのでしょうか?


 アルコールは体内でまず有害なアセトアルデヒドに代謝されます。日本人の4割の人はこれを次の段階に代謝する酵素が不全または欠損しているため、顔が赤くなり頭痛などの不快な症状を起こします。アセトアルデヒドは発癌性もあり、健康によくありません。世の中には、いくら酒を飲んでも平気な人がいる一方で、日本酒1合(ビール500ml)でもからだに受け付けない人がいます。


 昔は特に男性だと、いくら飲んでも酔わない人は「強い」と言って尊敬される風潮がありました。また、飲酒運転さえも、警察が大目に見る時代がありました。20数年前、ある離島で町村保健師さんから、嫁がお客さんにビールを出さないと、「この嫁は気が利かない」と叱られる、という話がありました。そこでは疲れをいやす楽しみと言ったら、お酒であったり地区の祭りぐらいでした。


 お酒の失敗も人生の肥やしになればいいのですが、毎日のように飲んでいると、次第に酒量が増えて食事量が減り、肝臓や脳に異変が生じ、仕事や家庭生活にも支障が生じます。

 

 

 

自分の依存度がどのくらいかを知る

  お酒の効用に、いっしょに飲む人と仲間意識が持てることがあります。ただし、飲むことが癖になり、飲まないとさみしくなるという依存の問題があります。


 依存には5つの段階があります。興味を持っていても使用してない段階は0段階です。アルコールを飲んで楽しくなったり元気が出たり、気分の変化を覚えるのは第1段階。次第に、気分の変化を求め(第2段階)、夢中になる(第3段階)。ついには切れると正常と感じられない(第4段階)。この段階になるといくらまわりの人から問題を指摘され、自分でもこのままではいけないと思っても、行動の修正が困難です。


 現代はストレス社会と言われていますが、私たちはいろいろと「食う、寝る、遊ぶ」などを通し気分転換をしています。しかし、嫌なことで気がふさぐと、明日のことも不安になり出し、場合によってはパチンコや競馬などのギャンブル、アルコールなどの依存物質で気晴らしすることがあります。これらは適度であれば楽しみとして、日々の生活の潤滑油にもなります。ところが、生活や人間関係に支障が出るようになると、自分の力だけではどうにも制御不能となり、依存症という病気に対し、生き方の変更を迫られます。