保健の窓

お酒とメタボとがん

鳥取大学医学部社会医学講座環境予防医学分野 尾崎米厚

お酒とがん~飲んでも少量に

お酒とがんの関係はあるのでしょうか?厚生労働省の研究班による大規模追跡調査によると、少量飲酒(飲むアルコールの量が週150g未満:毎日飲むとするとアルコール度数5%のビール500mlくらい)の人の総死亡もがん死亡も最も少なかったといいます。多量の飲酒により、かかりやすくなるがんは、口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓がん等です。多量のお酒を飲む人ほどがんにかかりやすくなるのは喫煙者で顕著です。男性では、飲酒量が多くなるにつれ大腸がんにもかかりやすくなるようです。男性での調査によると、お酒をたくさん飲む人(週300g以上)は、特にがんにかかりやすいので、これらの人が酒を少量飲酒以下に減らせれば、男性のがんの12.5%が減らせる計算になります。

がん以外でも多量の飲酒をすると血圧があがりやすくなり、脳出血にもかかりやすくなります。心筋梗塞のように多量飲酒者でむしろ少しかかりにくくなる病気もまれにありますが、病気全体を考えるとやはり、お酒は飲まないか、飲んでも少量にとどめるのが良いようです。また、同じ量飲むのなら、休刊日(週に1日、2日飲まない日を作る)があるほうが、死亡率も高くなりにくいこともわかっています。

メタボとがん~肝がん、膵がんと関連

メタボリック症候群は、がんと関連があるのでしょうか?厚生労働省研究班の大規模追跡調査によると、がんとの関連は全体では、はっきりしませんでしたが、男性では肝がん、女性では膵がんと関連があったと報告されています。鳥取県の健康診断受診者の健診結果とがんとの関係を鳥取県地域がん登録の情報を用いて分析したところ、男性では肝がん、女性では全部位のがん、肝がん、乳がん(特に多くが閉経している55歳以上の乳がん)との関連が強いという結果でした。全国の調査よりも関連が強く出て、女性で、より関連が強いという結果でした。

肝がんとの関連は、最近注目されている非アルコール性脂肪肝炎(ナッシュ)からの肝がん発症を示している可能性が高いと思われます。ナッシュは、メタボリック症候群との関係が強い、アルコールやウイルス肝炎と関連がない肝ぞうの炎症です。メタボ要素の影響をみると肝がんと関連が強いのは高血糖や低HDLコレステロール、乳がんと関連が強いのは肥満でした。今後は、メタボ健診が残るかどうかは不透明ですが、メタボの要素である腹部肥満、高血糖、低HDLを防ぎ改善することはがん予防にも有効であるといえます。