保健の窓

おしっこの悩みにお答えします―子供のおねしょから高齢者の尿もれまで―

鳥取大学医学部器官制御外科学講座腎泌尿器学教授 宮川征男

 

「おしっこ」という言い方は、「小便」、「尿」の幼児語ですが、この題では「排尿」という意味だとご理解ください。

人間の体はうまい具合にできていると思います。尿の排泄の仕組みについても、本当によくできていると感心させられます。健康維持のため、腎臓は始終尿を作り、尿管がこれをせっせと運び、膀胱がこの尿を一旦蓄えます。尿を蓄えている間は、走ったり、飛んだり、いろいろな動作をしても、膀胱から尿が漏れることがないように、尿道がしっかり締まります。

膀胱は尿で一杯になると、それを脳の中枢に教えます。寝ていても同じです。しかし、脳が排尿すると決めるまで、膀胱は排尿収縮を起こしません。ですから我々は場所を選び、準備をして、排尿することができるのです。そして、いよいよ排尿すると決めると、しっかり締まっていた尿道が開き、膀胱が収縮し、尿が勢い良く排泄されるのです。

つまり、排尿現象というのは膀胱、尿道、脳、これらをつなぐ脊髄や神経、また命令を伝えるいろいろな物質が協同的に作用して起きるのです。これらのバランスがくずれると、尿が勢い良く出なくなったり、トイレに行く前に尿がもれてしまったり、笑ったり、重い荷物を持った時に尿がもれ出たりします。また、成長段階でこれらの発育が遅れた場合、おねしょが続いたりするのです。

最近、生命に危険を加える病態だけでなく、生活の質を高める治療にも重点がおかれるようになってきました。調べていく内意外に、これら排尿の問題で悩んでいる人が多いことが分りました。たとえば米国の調査では、排尿を我慢しにくくなる症状(過活動膀胱という)を持つ患者数は、関節炎、慢性副鼻腔炎に続き多く、高血圧や胃潰瘍の患者よりも多いことが分かりました。そして当然、新しい薬剤や治療法の開発も急速に進んでおります。

排尿に関する症状で悩んでいる人が少なくなるように、その原因や治療を理解していただきたいと思います。