保健の窓

いびきは、心と体の危険信号!

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 樋上 茂

良い睡眠を取るために

いびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)の特徴的な症状ですが、大人と子供では、心と体に与える影響が違います。ねむるとノドがゆるみますので、ノドが狭いといびきが出たり呼吸が止まったりします。

大きく分けて、良い睡眠が得られないことと、十分に呼吸ができないことから,さまざまな影響が生じます。良い睡眠が取れないことで、大人には、スッキリした目覚めがなく、日中はねむく、集中力が低下するなど、子供には、寝相・寝起きの悪さ、夜鳴き、悪夢、夜尿などの症状があらわれます。特に長く深い睡眠が必要な子供では、睡眠が不足すると免疫力が低下し、上気道炎、気管支炎、中耳炎などを繰り返します。「ねむい」ことを理解できない子供は、逆にイライラして落ち着きがなくなることもあります。睡眠中に呼吸が障害され、体内の酸素が不足することによって、成人では、循環器疾患(高血圧,狭心症など)、脳血管疾患、内分泌疾患(糖尿病)などに影響が生じます。特に1時間に30回以上の無呼吸がある重症患者は、もし治療を受けなければ命を失う危険さえ高いと報告されています。

大人と子どもで違ういびき

いびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)の特徴的な症状です。大人は「ガーガー」とうるさく、子供は「クークー」と小さく、いびき音が違うことをご存知でしょうか。

一般的に肥満がSASの原因のように思われていますが、日本人は顔の作り(骨格)の影響が強く、子供では肥満の影響はほとんどありません。大人の診断は、一晩の睡眠脳波検査で行います。1時間当たり10秒以上の呼吸停止が5回以上あればSASで、30回以上が重症です。子供は、睡眠脳波検査をしなくても、ご両親がいびきや苦しそうな呼吸に気づいていることで診断できます。2呼吸分(5~8秒)の呼吸停止が1時間に1回あればSASと診断され、2回以上なら治療すべきとされています。大人の治療は、ノドを空気で広げる鼻シーパップと呼ばれる機器を睡眠中に使うことが一般的で、鼻の病気や大きい扁桃腺があれば手術も有効です。子供の原因はアデノイドと扁桃腺がほとんどですので、手術が非常に有効です。

注意すべき点は、いびきがあるかどうかが第一ですので、家族にいびきをかいている人がいらっしゃいましたら、専門の医療機関の受診をお薦めします。