保健の窓

あなたの骨は大丈夫ですか?骨粗鬆症とは

鳥取県立中央病院整形外科部長 鱸 俊朗

“寝たきりの原因は骨折が第3位”

骨粗鬆症になると、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。例えば、50歳の女性が将来、骨折を起こす確率は40%、男性でも13%、さらに、60歳では半数の女性、70歳では6割の女性が骨折しやすい状態にあると言われています。寝たきりの原因は脳血管障害、心臓血管障害についで骨折が第3位であり、寝たきりで体が動かせなくなると、刺激が少なくなりぼける確率が高くなりまた肺炎等の合併症も増えてきます。寝たきりにならなくても、背骨がつぶれ腰が曲がり(自然に背骨の骨折が起こる)、背中や腰の痛み、だるさ、肩こり頭痛等で悩まされることになります。

“骨の一生と骨粗鬆症”

骨には成長期ー成熟期ー閉経ー加齢にともなう、骨の量(骨量)の増減が見られます。骨には骨を作る細胞(骨芽細胞)と溶かす細胞(破骨細胞)があり大人になって骨格が固まると、もう変化しないように思われますが、実際は毛髪と、皮膚と同じように古い骨と新しい骨を入れ替える作業がなされています。古い骨が溶かされ新しい骨が作られるためには3カ月から5カ月かかると言われています。骨粗鬆症はこの骨を作る力と骨を溶かす力のバランスが崩れ骨を作る力が弱くなり、一方では骨を溶かす力が強くなるため、骨そのものが弱くなる病気なのです。特に女性は50歳になると閉経期という骨にとって大きな転機が現れ、骨を溶かす力をおさえていた女性ホルモン(エストローゲン)が減少し、骨は溶ける一方となり、閉経後の10年間に2割から3割、骨量は減少してしまいます。このことから骨粗鬆症患者の8割が女性であるということも納得できます。

“骨量(骨の年齢)を測って見ませんか” -骨の検診-

骨粗鬆症は、自覚症状がないまま長年にわたり進行し、突然の背部痛、腰痛、骨折として発症する場合が多いようです。骨粗鬆症の予防のための生活習慣の改善の動機づけにおいても、また、症状が出ない前に治療するためにも自分の骨の量を知っておくことは重要なことだと思います。

骨量測定は各医療機関、保健所で痛みなく簡単に検査が出来、MD法(エックス線撮影)、DXA法(どの部位もはかれます)、超音波法等が一般的なものです。

“骨粗鬆症予防の三つのポイント”

若いうちから骨量の減少を予防することが大切であり、その鍵は日常生活のなかでのライフスタイルの改善にあります。牛乳.乳製品をあまりとらない、偏食が多い、ファーストフードやインスタント食品をよく食べる、塩辛いものがすき、スポーツや体を動かすことが嫌い、無理なダイエットをした、あまり日に当たらない、ヘビースモーカーである、お酒を常飲している、コーヒーをよく飲む、ストレスがよくたまるなどが危険因子となります。

その中でも、(1)吸収性の高いカルシウムを多く含む食品を十分とること、(2)吸収したカルシウムを効率よく骨に沈着させ、骨の形成を促進するために運動する、(3)適度に日光を浴び皮膚でのビタミンDの形成をはかる。丈夫な骨つくりには、カルシウム、運動、日光浴の三つの要素が不可欠です。

“骨粗鬆症と診断されたら?”

骨量検査をしたら健康な若い人の骨量の70%未満と診断された人は、これから骨折を起こす可能性が高くなりますから、早く骨量を増加維持させるための治療を受けるため、かかりつけの先生に治療を相談し治療法にあった生活指導を受ける必要があります。一般に以下の治療法を併用した治療がなされます。

補助療法:運動療法(体の平衡感覚を鍛え、骨折を防止する動きかたを身につける)、食事療法(カルシウム摂取を主体としたバランスの良い食事)

薬物療法:骨形成を目的とした薬、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ薬

“おわりに”

あなたの骨の健康を維持し骨折を防ぐためには、骨量測定により経時的な骨量の推移を知り、治療、住まい環境を含めた自己管理が必要であり、骨粗鬆症と診断されてもがっかりすることはなく、最近の骨折防止の治療薬の進歩などを考えると、近い将来、骨粗鬆症の治療の新しい道がひらかれると思われます。