保健の窓

「CKD(シーケーディー)」って知ってますか?

鳥取大学医学部附属病院腎臓内科 宗村千潮

8人に1人が慢性腎臓病(上)

『CKD(シーケーディー)』って知ってますか?初めて耳にする方がほとんどだと思います。日本語では『慢性腎臓病』といいますが、英語のChronic Kidney Diseaseの頭文字をとってCKDと略します。この名前ができたのは2002年とつい最近のことですが、腎炎や糖尿病、高血圧等を原因として慢性に経過する腎臓の病気を総称する病名がこれまでなかったために新たに作られた名前です。3ヶ月以上蛋白尿等の腎障害が続くか、または3ヶ月以上GFR(糸球体濾過量;正常値100ml/分)が60ml/分未満の状態が続くとCKDということになります。

現在日本腎臓学会ではCKD対策が急務の課題となっていますが、その理由の一つはCKDは患者数がとても多いことです。わが国の成人の10.6%が、GFR60ml/分未満で、また腎機能正常者の2.3%が蛋白尿陽性で、計12.9%(成人の8人に1人)、1330万人がCKDになると推定されます。2007年末現在、日本で約27万5千人の方が透析を受けており、毎年約1万人ずつ増加していますが、その背景にはこれだけ多くの透析予備軍であるCKD患者が存在しています。次回はCKDのもう一つの大きな問題についてお話します。

CKDは心血管病のリスク

前回はCKD(慢性腎臓病)患者がとても多いことをお話しました。CKDが注目されるもう一つの理由はCKDが心血管病すなわち脳卒中、心筋梗塞、心不全等の危険因子であることです。わが国のCKD患者1330万人のうち毎年新規に透析を開始される方は約3万人とほんの一部です。しかしCKDの多くの方が末期腎不全に至る前に心血管病を起こして命を落とすことが疫学調査で示されています。

末期腎不全にならないため、心血管病を起こさないためには、まず第一にCKDにならないこと、第二にCKDになったなら、早期に診断、適切な治療を受け、腎臓病を進行させないことが重要です。高血圧、糖尿病、肥満、高脂血症、メタボリックシンドローム、膠原病、尿路結石、鎮痛剤の常用、喫煙、片腎等はCKD発症の危険因子であり、これらに該当する方はぜひかかりつけ医で尿検査、腎機能検査を受けてください。また予防としては生活習慣の改善すなわち禁煙、減塩、肥満の改善に努めてください。CKD対策には皆さんの心がけがとても大切です。もしCKDと診断されても現在はCKDの進行を抑えるよい治療がありますので、かかりつけ医とよく相談してください。