保健の窓

「沈黙の病気」骨粗しょう症

鳥取大学医学部保健学科 基礎看護学分野教授 萩野 浩

骨折で1/5が寝たきりに

骨粗しょう症は「沈黙の病気」と呼ばれています。骨粗しょう症は骨がもろくなって骨折が起きやすくなる病気ですが、骨が折れるまでは症状の無いことが多いため、そう呼ばれます。しかしながら、骨粗しょう症のために、股の付け根の骨折や背骨の骨折を起こすと、入院したり手術が必要になったりするとともに、日常の生活を行うのが困難になります。股の付け根を骨折すると歩くのが不自由になり、約1/5の方は寝たきりになってしまします。

骨粗しょう症になりやすいのは、女性、高齢者、やせている、たばこを吸う、お酒を飲む、親が骨折した、などが当てはまる方です。また、骨粗しょう症になっていることを疑わせる症状があります。「背中が丸くなった」、「若いときに比べて身長がかなり縮んだ」、「ささいなことで骨折した」などがそれに当たります。骨粗しょう症になっていないかどうかは「骨量測定」という方法で骨のカルシウム量を測ればわかります。この検査は痛みなく短時間で行えます。検診で受けることができますし、骨粗しょう症が疑われるようでしたら、病院でも検査が受けられます。

転倒防いで骨折防止

骨粗しょう症の予防は食事と運動です。食事ではカルシウムを十分に摂ることが大切ですが、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンC、葉酸なども必要です。これらの栄養素を考えたバランスの良い食事を続けることが予防の第一歩です。また運動も骨粗しょう症の予防に重要です。スペースシャトルで宇宙に出ると、骨のカルシウムが急速に減ってしまうことが知られていて、骨にいつも体重をかけて刺激していることで、骨を丈夫に保っているのです。ウォーキングや筋力アップの運動のうちで、できるものを少しずつ、根気よく続けることが予防につながります。

骨粗しょう症と診断されたら、薬による治療が必要となります。最近では骨量を増加させて骨折の危険性を半分にする薬がありますので、早期から治療をすると骨折を予防することができます。また、骨折は転倒が原因で起こりますので、運動を続けて骨量を維持し、転倒しないようにすることも大事です。屋内をきちんとかたづけて、階段やお風呂、トイレに手すりを付けることも、転倒を防いで骨折を防止します。