肝癌は肺癌、胃癌、大腸癌に次いで死因の第4位を占めています。肝癌の多くはB型やC型の肝炎ウイルスによるものですが、最近では過剰飲酒や過食による肥満・糖尿病によるものが増えています。今回、「肝癌にならないために」と題して「B型・C型ウイルス肝炎」と「飲酒や肥満・糖尿病による脂肪肝炎」についてお話しします。 肝癌は早期では自覚症状がないため、早期発見にはB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの検診を行い、陽性者では経過を追って定期的に検査することが大切です。このため平成14年より公費による肝炎ウイルス検診が行われています。B型肝炎ウイルスは昭和61年以前の出産に伴う母子感染等が、C型肝炎ウイルスは平成元年以前に行われた輸血等が感染の原因です。現在B型ウイルスに対してはその増殖を抑える核酸アナログ製剤が使用され、肝炎を沈静化することが出来ます。C型ウイルスに対しても、最近ウイルスに直接作用する抗ウイルス剤内服薬が市販され、インターフェロン使用せず80〜90%の率でウイルスが排除出来る様になっています。この様に現在ではB型・C型肝炎に対して原因療法が可能になり、肝硬変への進展や肝癌の発症が抑制されるようになって来ています。
前回、「肝癌にならないために㊤」と題してB型とC型のウイルス肝炎のお話をしましたが、今回は最近増加している飲酒や肥満・糖尿病による脂肪肝炎が肝癌の発症と関連していることが明らかになっていますのでこのお話しをします。 脂肪肝は肝細胞内に脂肪が蓄積した状態で臨床的には特に問題となることはない良性の疾患と考えられていました。ところが、このうち1割程度の症例では脂肪肝に炎症・線維化が加わった脂肪肝炎となり、肝硬変・肝癌へと進展することが明らかになりました。脂肪肝は検診で中高年者の約3割に認められるので、脂肪肝炎患者はわが国では300〜400万人いると推測されます。脂肪肝炎の原因としては、過剰飲酒あるいは過食による肥満・糖尿病が挙げられます。対策としてはアルコール性脂肪肝炎では禁酒を、非アルコール性脂肪肝炎では食事療法と運動療法により体重を減らすことです。現在非アルコール性脂肪肝炎に対する薬物療法が検討されていますが、未だ確立されていません。 ところで、最近では喫煙が慢性肝疾患を進展させて肝発癌を増加させることが、一方でこれに反してコーヒーをよく飲むと肝癌になりにくい事が明らかにされています。