保健の窓

泌尿器癌と排尿障害

鳥取市 さとに田園クリニック 大畠 領

増加する前立腺癌

 癌は今や国民の二人に一人が罹患する国民病とも言われています。泌尿器科の診療する癌もやはり増加し、特に前立腺癌は患者数が現在9万人を超え、2015年の統計でこれまでの予想を覆し男性の癌罹患数の第1位になったようです。しかしながら前立腺癌の発見には血液検査で前立腺(ぜんりつせん)特異(とくい)抗原(こうげん)(PSA)という腫瘍マーカーが用いられ早期癌にも有用です。さらに治療の一つに手術が挙げられますが、手術方法はここ10年あまりで開腹手術から腹腔(ふくくう)鏡(きょう)手術(しゅじゅつ)、さらにはロボット手術へと変化しています。放射線治療でも小線源(しょうせんげん)療法(りょうほう)や強度(きょうど)変調(へんちょう)放射(ほうしゃ)線(せん)治療(ちりょう)といった合併症を減らしながら効果を保つ方法が可能になり、進行した前立腺癌や再発した前立腺癌はホルモン剤や抗癌剤で治療を行いますが新規のホルモン剤や抗癌剤が使用可能となり予後(よご)の改善に役立っています。他の癌と同様に早期発見が重要ですが前立腺癌の危険因子に動物性脂肪の過剰摂取が指摘されており、脂肪やコレステロールの摂取を控えることが予防につながるとのことです。

 

 

 

 

排尿障害

 おしっこが近い、夜何回もトイレに起きる、漏れてしまう、など尿に関する悩みはさまざまで、実は多くの方にあるようです。  よくある症状の一つに突然トイレに行きたくなって急いでいかないと間に合わない感じがするというものがあります。なかには間に合わなくて失禁することもあります。これは尿意切迫や切迫性尿失禁といい、過活動膀胱の症状です。適切な内服治療で症状が軽減しトイレに行く回数が減ったり失禁なくなったり、夜間頻尿が改善することもあります。  同じ失禁でも咳やくしゃみなどお腹に力が入ったときに尿が漏れるものを腹圧性尿失禁と言います。これは女性に多く、加齢や出産などで膀胱、子宮や直腸などの骨盤内臓器を支える骨盤底筋(こつばんていきん)が弱くなったことでおきます。内服治療のみでは症状がよくならないこともあり、骨盤底筋体操という運動療法と併用されます。  その他にも糖尿病や心疾患が原因で尿の回数が増加したり、男性では前立腺肥大症が原因で頻尿となったりする場合があります。夜の排尿回数が多くなった方の中には、昼寝を短くすることや日中の運動が熟睡につながり夜間頻尿の改善が得られることもあります。