胸に手のひらを当てると心臓の鼓動を、手首の親指側(橈骨動脈という血管が走っている)に指を当てると脈を感じることができます。通常は同じ間隔で心臓が拍動しているので、鼓動や脈は規則正しいリズムとなっています。ここに乱れが生じる状態を「不整脈」と呼びます。不整脈と聞くと心配な病気と思われることでしょう。しかし不整脈にも種類がたくさんあります。最も多い不整脈は期外収縮と呼ばれるもので、規則正しく心臓が拍動している中で、一瞬脈がとぶという現象を起こします。24時間心電図を連続して記録するとほとんどの方で気づかないうちに期外収縮は起きています。ストレスが強くなると期外収縮は増えるので、これが期外収縮に気づくきっかけとなれば、さらにストレスがかかり不安は募りますよね。しかし期外収縮だけであれば治療を必要としないことがほとんどで、患者さんには「気にしないようにしてください」とご説明することが多いです。ただし、脈がとぶというだけでは期外収縮以外の不整脈の可能性もありますので、勝手な判断はせず、必ず医師に相談してください。次回は、治療が必要な不整脈についてお話しさせていただきます。
心臓の規則正しい拍動リズムに乱れが生じる状態である不整脈の中で、何らかの治療が必要となる患者数の多いのが心房細動です。心房細動になると心臓の拍動リズムは全くデタラメとなります。発症頻度は年齢とともに上昇し、日本人では70歳代で2~3%、80歳代で3~4%の方に認めるとされています。一時的に起きる「発作性」と、常時起きている「持続性」に分けられ、いずれであっても心不全や脳卒中を起こす原因となり、脳卒中予防のために多くの患者さんで血液をさらさらにする薬(抗凝固薬)が必要となります。心房細動をもとの規則正しい脈に戻すための治療では、カテーテルという管を足の付け根の血管から心臓まで入れて心臓内の異常な電気の通り道を遮断する「アブレーション」という方法を用いることが増えています。そのやり方も進歩しており、最近認可され一部の病院で実施可能な「冷凍アブレーション」という方法を用いると、これまでより短い施術時間で高い効果を得ることが可能となりました。鳥取大学医学部附属病院でもすでに取り入れています。ただし、心房細動の患者さんすべてに適応となる治療法ではありませんので、詳細は専門医にご相談ください。