今年は平年よりも早く梅雨明けし、体が暑さに慣れていない時期に各地で猛暑日が続きました。史上最悪といわれた昨年を上回るペースで、熱中症による搬送者も増えています。
人間の体は、高温・多湿の状態におかれると、自律神経の働きで、汗をかいたり血管を拡げたりして体温を下げようとします。自律神経への過度な負担は、全身の機能に影響を及ぼし、体温の上昇・倦怠感・胃腸機能の低下等を招きます。
電力不足の影響で節電意識が高まっていますが、エアコンをつけずに我慢していると自宅にいても熱中症に罹ってしまう危険があります。今回の講演では、涼しく過ごすくふうや、夏バテを予防・解消する食物等についてお話します。時には適度に冷房を使用した方がよいのですが、冷房の効いた部屋に入っても体はすぐに切り替えることはできませんし、5度以上の温度変化は自律神経への負担となります。冷え性の方は特にこまめに上着を脱ぎ着し、省エネのためにも28度程度に設定しましょう。除湿機能や扇風機の併用、タイマーの利用も有効です。
朝夕の涼しい時間に行う適度な運動は、食欲が増し、寝つきもよくし、暑さへの適応力がつきます。ゆっくりぬるめの入浴にも同様の効果があります。
心筋梗塞や脳梗塞は冬の病気と思われがちですが、気温が32度以上になると増加するということが知られています。お年寄りはもともと体内の水分が少ないこともあり、心臓病や糖尿病のある方はとくに血栓症ができやすいのです。お年寄りは暑さも感じにくく、汗をかく量も少ないので、熱中症になりやすいともいわれます。暑い日は普段より多めに水分を摂取しましょう。一人暮らしの方はとくに注意が必要です。
のどが渇いても、ビール等のアルコール飲料は、利尿作用があるため、体内の水分が不足し、かえって血栓症の危険が増加します。今回は上手にアルコールを飲む方法についてもお話しします。
夏バテで胃腸機能が低下すると、お薬を服用したりインスリン注射をしている糖尿病の方は、食事摂取不良による低血糖に注意する必要がありますが、甘い物で血糖値を急に上げることには問題があります。高血圧の方は、食欲が減退しがちな日には、つい塩辛い物を食べてしまいがちですが、日常生活では塩分が不足することは、あまり考えられません。水分とともに塩分・糖分・必須アミノ酸を摂ることも重要ですが、心臓病等の持病のある方は、さらに細かい注意が必要です。