高齢化社会の進展とともに健康意識の高まりから中高年のスポーツ愛好家が増えています。平成21年の国民健康・栄養調査(厚労省)では、健康目的に運動を行っているひとは若者よりも50歳以上の中高年に多く、60歳以上ではその割合が60%を超えているという結果が出ています。定期的な運動は生活習慣病やロコモーティブ症候群(骨・関節などの衰えにより要介護になりやすい状況)に予防効果があると言われていますが、中高年の場合、からだの加齢変化をふまえて運動を行う必要性があります。加齢変化とは「老化」で、心臓や呼吸などの内臓機能のみならず骨・関節・筋肉・神経などのいわゆる「運動器」にも現れます。具体的には筋力の低下、柔軟性の低下、バランス能力の低下、関節軟骨の変性、骨強度の低下などで、特に膝の軟骨が擦り減る変形性膝関節症の方は多くいらっしゃいます。
運動器の老化は避けられません。スポーツ愛好家の方々は準備運動やクールダウンなどで運動中のケガを防ぐことも大事ですが、長く継続するためには、「どこまで衰えているか」を理解した上でスポーツに取組むことが大事です。
先回「体の衰えを理解しよう」という内容に続き、中高年期に多くみられる運動器疾患とスポーツ・運動についてお話します。まず骨の加齢変化として骨密度が減少し、骨がもろくなり、些細な転倒で骨折しやすくなる骨粗鬆症があります。若い頃からのスポーツは骨粗鬆症を予防する効果が望めますが、中高年から始めるスポーツでは効果は少ないかもしれません。しかし「太極拳で転倒予防効果」といった報告があるように、転倒骨折の予防は期待できます。関節の加齢変化である変形性膝関節症では荷重ストレスや筋機能の低下により軟骨がすり減る状況ですので、荷重がかかるスポーツや身体活動は不向きですが、水中ウォーキングや体重がかからない筋トレをすることで症状が改善することもあります。
若い頃からのスポーツや身体活動が運動器疾患の予防になる場合がありますが、使い過ぎによる弊害もあります。また既に運動器疾患がある方がスポーツで悪化しては本末転倒です。特に中高年での体の衰えは個人差が大きいので、安全に楽しく且つ効果的な運動を行うためには、定期的な体力測定と最寄りの整形外科医に相談して下さい。
是非、自分にあった運動を見つけてください。