健康ア・ラ・カルト

Ⅲ.健康とっとり計画

鳥取県では、昭和46年に「鳥取県健康対策協議会」、昭和62年に「健康県づくり県民運動推進会議」を設置するなど、全国に先がけて健康づくりに取り組んできました。しかしながら、近年、がんや心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病の増加、高齢者の増加に伴う痴呆や寝たきり状態の人の増加など健康に関する新たな課題も増加しています。

そこで、鳥取県では、「健康とっとり計画」を平成13年6月に策定しました。この計画は、みなさんの積極的な健康づくりの取り組みを推進し、行政や関係機関などが社会全体としてみなさんの取り組みを支援しようとするものです。

この計画を参考に、みなさんも健康づくりに取り組みましょう。

1 計画の目的

県民のみなさん一人ひとりの生活習慣を改善することで、壮年期死亡を減らし、痴呆や寝たきりにならないで生活できる期間(健康寿命)を延ばし、生活の質を向上させることを目的としています。

2 計画の時期

本計画は、平成22年(2010年)度を最終年度とする10か年計画です。

3 健康づくりの目標

次の6分野ごとに健康づくりの目安となる具体的な目標を設定しています。

  • 健康増進
  • 生活習慣病予防(循環器病・糖尿病・がん、たばこ、アルコール)
  • 寝たきり予防
  • こころのケア
  • アレルギー性疾患対策
  • 歯科保健

なお、数値目標の設定のない項目については、今後、目標値の追加設定や見直しを行っていきます。

1)健康増進

【重点課題】
  1. 栄養、運動、休養を中心とした望ましい生活習慣の確立
  2. 幼児期からの適正な食生活習慣の形成
  3. 歩数(歩く時間)の増加、運動習慣のある者や運動好きな子どもの増加
  4. ストレスを自覚し、それに対処できる知識や能力の向上
【取り組みの方向性】
  1. 栄養・食生活
    • 望ましい食生活への知識の普及
    • 正しい健康・栄養情報の提供
    • 各関係機関、関係団体との連携による食教育の充実
  2. 身体活動
    • 歩行など意識的に身体活動をする働きかけや環境の整備
    • 家庭、地域、職場における運動実践の推進
    • 子どもの遊びや高齢者に適した運動の推進、冬季の運動の確保
  3. こころの健康
    • ストレスを自覚し、それに対処するための知識、情報の提供
    • 適切な睡眠をとるとともに、積極的休養の推進とそのための情報の提供
【目標値】
指   標 現   状 目標(2010年)
健康水準の指標
適正体重を維持する者を増やす 肥満者※1 児童・生徒(一) 減らす
男性(30~60歳代)22.8% 14%以下
女性(50~70歳代)28.2% 22%以下
低体重の者※2 女性(20歳代)26.5% 17%以下
貧血の者※3を減らす 女性17.5% 高齢者14.6% 10%以下
ストレスを感じた者を減らす 男性68.0% 女性75.3% 減らす
睡眠による休養を十分とれていない者を減らす
県民の行動実践指標
朝食を欠食する者を減らす 児童・生徒16.9% 幼児(-) 0%
成人男性 18.1% 10%以下
食塩摂取量(1日あたり)を減らす 男性13.8g 女性12.5g 10g未満
脂肪エネルギ-比率(1日あたり)を減らす 20~40歳代 29.8% 25%以下
野菜の摂取量(1日あたり)を増やす 274.8g 350g以上
カルシウムに富む食品の摂取量(1日あたり)を増やす 牛乳・乳製品 (成人)102.6g 130g以上
豆・豆製品 76.2g 100g以上
緑黄色野菜 94.9g 120g以上
適正体重の維持に努めている者を増やす 15歳以上(-) 90%以上
1日最低1回以上きちんとした食事とる者を増やす 62.0% 90%以上
1日の歩数※4を増やす 成 人 男性7,138歩 8,200歩以上
女性6,276歩 7,300歩以上
高 齢 者(70歳以上) 男性4,440歩 5,700歩以上
女性4,145歩 5,500歩以上
意識的に運動する者を増やす 男性19.7% 女性20.1% 30%以上
運動施設の利用者を増やす
運動好きな子どもを増やす
環境整備指標
ヘルシーメニューを提供する店舗を増やす
外食や調理済食品の栄養成分表示をする店を増やす
運動教室・指導者を増やす
スポーツ少年団等参加者を増やす
健康や栄養に関する学習の場や自主グループを増やす
こころの健康づくりを視点にした健康教育の場を増やす
※1
肥 満 者:BMI25以上の者
※2
低体重の者:BMI18.5未満の者
※3
貧血の者:男-血色素13g/dl未満又はヘマトクリット値39%未満の者
女-血色素12g/dl未満又はヘマトクリット値36%未満の者
※4
歩く時間に換算して成人は現状より10分以上、高齢者は現状より15分以上増加

2)生活習慣病対策-循環器病・糖尿病・がん-

【重点課題】
  • 脳卒中(循環器病)・糖尿病・がんの予防
【取り組みの方向性】
  • 脳卒中・心臓病・高血圧・高脂血症・糖尿病
  • がん予防の知識の普及
  • 健康診査・がん検診を受けることの大切さの普及、検診を受けやすい環境づくりと精度の向上
  • 特に、40~60歳代の男性の受診率を高めるために、職域や自営業の人が受診しやすい環境づくり
  • 精密検査を受けやすい環境づくり
  • 定期的な経過観察と治療継続の徹底
  • 生活習慣病になっている者や予防のための自主グループの育成
【目標値】
指  標 現  状 目標(2010年)
健康水準の指標
健診有所見者の割合を減らす 市町村基本健康診査結果  
糖尿病    14.3% 10%以下
高血圧    27.0% 20%以下
境界域高血圧 10.6% 10%以下
高脂血症   33.6% 30%以下
糖尿病受診者数を減らす(1月あたり) 通院 延7,482人 入院延 341人 減らす
がん発症者率を減らす 年齢調整罹患率・人口10万対 減らす
胃がん  男性97.0 女性46.8
結腸がん 男性54.2 女性28.6
直腸がん 男性25.0 女性10.7
肺がん  男性62.4 女性20.3
肝臓がん 男性40.8女性11.0
検診によるがん発見者のうち早期がんの割合を増やす 市町村がん検診 増やす
胃がん 75.3% 大腸がん71.2% 肺がん(-)
標準化死亡比※5を減らす 脳卒中  男性110.6 女性110.3 減らす
胃がん  男性107.7 女性111.7
大腸がん 男性101.4 女性 96.3
肺がん  男性98.7  女性 92.1
肝臓がん 男性106.5 女性103.0
県民の行動実践指標
高血圧・糖尿病・高脂血症などの予防に心がけている者を増やす
健康診査の受診者(率)を増やす(市町村の行う各種健康診査) 基本健康診査36.4% 肺がん検診36.5% 50%以上
胃がん検診22.9% 子宮がん検診20.5% 35%以上
乳がん検診22.7% 大腸がん検診27.3%
環境整備指標
市町村の行う集団健康教育の実施回数を増やす
市町村の行う個別健康教育を受ける者を増やす
乳がん自己検診法の教育を取り入れている市町村を増やす
中小事業所のうち健診を行っている割合を増やす
生活習慣病の者や予防のための自主グループの育成に取り組む市町村・医療機関を増やす
※5
標準化死亡比:全国の死亡率を100とした時の鳥取県の死亡率

3)生活習慣病対策―たばこ-

【重点課題】
  1. 分煙の徹底
  2. 禁煙支援プログラムの充実
  3. 未成年者・妊産婦の喫煙ゼロ
【取り組みの方向性】
  • 喫煙がもたらす健康影響などの喫煙に関する知識の普及
  • 分煙、喫煙マナーの徹底
  • 市町村、医療機関での禁煙支援プログラムの整備・充実
  • 未成年者、妊産婦の喫煙及び受動喫煙の防止
【目標値】
指  標 現  状 目標(2010年)
県民の行動実践指標
未成年者の喫煙(喫煙率※6)をなくす 中学2年 男子9.5% 女子4.5% 0%
高校3年 男子33.5% 女子21.0%
妊産婦の喫煙をなくす
禁煙指導を受ける者を増やす
喫煙が及ぼす健康影響についての知識を持っている者を増やす
「未成年者・妊産婦のいるところでは、たばこを吸わない」という意識の者を増やす
環境整備指標
分煙を実施する施設を増やす 公共の場17.6% 病院46.3%
診療所50.4% 歯科診療所45.5%
職場・学校・運動施設(-)
100%
禁煙指導を行う医療機関を増やす
喫煙が及ぼす健康影響についての教育を実施している学校を増やす
学校周辺及び分煙を進める施設での自動販売機を減らす
禁煙・節煙を希望する者に対する禁煙支援プログラムを実施している市町村・事業所を増やす
※6
喫煙率:中学2年は「学期に1~2回以上喫煙したことのある者」の割合
高校3年は「1か月以内に喫煙したことのある者」の割合

4)生活習慣病対策―アルコール-

【重点課題】
  1. 未成年者の飲酒をなくす
  2. 節度ある適度な飲酒の啓発
  3. 習慣的に多量飲酒する人の減少
【取り組みの方向性】
  • 未成年者へのアルコール教育の充実と飲酒の防止
  • 一般成人に対する「節度ある飲酒」についての健康教育の充実
  • アルコール関連問題の早期発見と関係者の地域ネットワークの整備
【目標値】
指  標 現  状 目標(2010年)
県民の行動実践指標
未成年者の飲酒(飲酒率※7)をなくす 中学2年 男子14.9% 女子10.2% 0%
高校2年 男子26.7% 女子20.6%
多量飲酒者を減らす
妊婦の飲酒をなくす
環境整備指標
アルコール健康教育を増やす
※7
飲酒率:中学2年、高校2年とも「月に1~2回以上飲酒したことのある者」の割合

5)寝たきり予防

【重点課題】
  1. 脳卒中、骨折、膝・腰痛による寝たきりの予防
  2. 閉じこもりの予防
  3. 脳卒中などで身体が不自由になっても、寝たきりにならない環境づくり
【取り組みの方向性】
  1. 予防
    • 脳卒中・骨粗鬆症・腰痛等の予防の推進
    • 転倒・骨折を予防するための知識の普及
    • 脳卒中発症時の早期発見と治療継続のための支援、再発予防のための知識の普及
  2. 閉じこもり予防
    • 高齢者の生きがい支援と声かけの推進
    • 高齢者が出かけやすい場づくり、仲間づくり
    • 痴呆の早期発見、早期対応ができるようにする
  3. 自立支援
    • 自立を支援する人のための研修の実施
    • バリアフリーの環境づくり
    • 地域リハビリテーションや受診のための送迎サービスなど支援策の推進
【目標値】
指  標 現  状 目標(2010年)
健康水準の指標
〈予 防〉
寝たきり者を減らす 65歳以上在宅 2.4% 1.2%
脳卒中による寝たきり者を減らす 65歳以上在宅 1.1% 0.6%
脳卒中発症率を減らす
脳卒中再発率を減らす
大腿骨頸部骨折患者を減らす (人口10万対)男性65.8 女性87.7 減らす
膝・腰痛患者を減らす 膝関節痛3,000人 腰痛6,000人 減らす
65歳以上の自立期間(介護を受けないで生活する年数)を延ばす 男性15.16年 女性18.74年 延ばす
〈自立支援〉
脳卒中患者で退院後の自立度が低下する者を減らす 退院時一部自立の者※8 37% 15%以下
退院時準寝たきり者※9 21% 10%以下
県民行動実践指標
〈予 防〉
高齢者で運動習慣を持つ者の割合を増やす(転倒防止) 60歳以上 男性 38.2% 50%
女性 21.7% 35%
80歳以上 20.1% 30%
〈閉じこもり予防〉
生きがいや役割を持つ者の割合を増やす
趣味などで出かける者の割合を増やす
〈自立支援〉
機能訓練など自立支援事業に参加する者を増やす
介護について学習する者を増やす
環境整備指標
〈予 防〉
骨粗鬆症健診をを実施する市町村を増やす 14市町村 39市町村
寝たきり予防教育を実施する市町村を増やす 重点教育 31市町村 39市町村
〈閉じこもり予防〉
保育所・小学校での世代間交流の場を増やす 全施設
〈自立支援〉
バリアフリーの公共的施設(適合証交付施設)を増やす 74施設 全施設
※8
一部自立:何らかの障害はあるが、日常生活は自立しており、独力で外出できる
※9
準寝たきり:屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出できない

6)こころのケア

【重点課題】
  • こころの不調をケアできる社会にする
【取り組みの方向性】
  • こころの健康相談窓口などの情報提供と相談体制の充実
  • 高齢者が孤立しないような地域ネットワークの充実と情報提供
【目標値】
指  標 現  状 目標(2010年)
健康水準の指標
自殺者を減らす 160人 減らす
県民の行動実践指標
こころの相談窓口を知っている者を増やす
支援サービスを利用する高齢者を増やす
環境整備指標
うつ病などの精神疾患への対応に関する健康教育の場を増やす

7)アレルギー疾患対策

【重点課題】
  • アレルギー疾患対策の推進
【取り組みの方向性】
  • アレルギー疾患に関する正しい知識・情報の提供
  • 関係機関の連携によるアレルギー疾患対策の推進
この分野は、今後、目標値設定などについて検討することとしています。

8)歯科保健

【重点課題】
  1. 歯の喪失防止
  2. 幼児期のう蝕予防
  3. 学齢期のう蝕予防
  4. 成人期の歯周病予防
【取り組みの方向性】
  • 「8020(ハチマルニイマル)運動」の積極的な展開
  • 正しい情報の提供及び一次予防としての自己管理の重要性についての普及啓発
  • 歯科疾患のための健康診断の強化
  • 関係機関の連携による歯科保健体制の整備
【目標値】
指  標 現  状 目標(2010年)
健康水準の指標
自分の歯を有する者の割合を増やす 80歳代で20歯以上 22.2% 30%以上
60歳代で24歯以上 48.5% 55%以上
50歳代で25歯以上 69.0% 75%以上
30歳代で25歯以上 74.9% 80%以上
う歯のない者を増やす 1歳6か月児   96.3% 100%
3歳児      65.3% 85%以上
むし歯罹患者率を減らす 小学生      82.5% 65%以下
中学生      84.7% 70%以下
高校生      91.3% 85%以下
1人平均う歯数を減らす 12歳児(DMF歯数※10) 2.4歯 1歯以下
進行した歯周炎に羅患者している者
(4㎜以上の歯周ポケットを有する者)を減らす
40歳代      31.2% 20%以下
50歳代      46.5% 30%以下
県民の行動実践指標
定期的に歯石除去や歯面清掃を受ける者を増やす 6.47% 30%以上
定期的に歯科健診を受けている者を増やす 8.27% 30%以上
間食として甘味食品・飲料を1日3回以上飲食する習慣を持つ者を減らす 8.7% 減らす
3歳までにフッ化物歯面塗布を受ける者を増やす 16.2% 50%以上
フッ化物配合歯磨剤の使用者を増やす 90%以上
過去1年間に個別的歯口清掃指導を受けた事のある者を増やす 6.01% 30%以上
歯間清掃用器具を使用する者を増やす デンタルフロス
30歳代26.7% 40歳代17.1% 50歳代12.4%
50%以上
歯間ブラシ
30歳代11.2% 40歳代17.8% 50歳代19.8%
50%以上
子どもの仕上げ磨きを毎日する保護者を増やす
歯科健診や歯科治療を受ける歯科医(かかりつけ歯科医)を決めている者を増やす
環境整備指標
定期的な歯科健診、フッ素塗布、保護者に対する歯科保健教育を実施するする市町村を増やす 17市町村 39市町村
年2回歯科健診を実施している学校(CO、GO所有者に対する再検査を含む)を増やす 増やす
CO、GO※11の者へ個別指導を実施している学校を増やす 増やす
保護者に対する歯科保健教育を実施する学校を増やす 増やす
ふしめ歯科健診の実施市町村を増やす 10市町村 39市町村
※10
DMF歯数:D(未処置歯)、M(喪失歯)、F(処置歯)の総数
※11
CO:う蝕の要観察者、GO:歯周の炎症の要観察者

4 計画の推進

目標達成に向けて、一人ひとりが健康づくりの主体であることを自覚し、生活習慣の改善を実践していくことが必要です。そして、自らも家庭、学校、職場、地域での健康づくりの一員であることを自覚し、積極的に健康づくり活動に参加することも大切です。

また、県では、健康とっとり計画を効果的に進めるため、県民と県や市町村等の行政機関、地域、教育機関、職場、保健医療専門家、保険者、マスメディア、非営利団体、健康関連企業などの関係する団体で「健康とっとり推進会議」を設置しました。この推進会議では、目標達成に向けた継続的な取り組みを行いながら、目標の達成度や施策の評価、見直しなど計画の進行管理を行うこととしています。