健康ア・ラ・カルト

【21)こころの病気】  11)精神分裂病

質問

精神分裂病と診断されて12年になります。この病気はどんな原因で起こりますか。脳のある物質が侵されて起こるとききましたが、それなら薬の治療で治るものでしょうか。現在、何も治療は受けていません。

回答

◎支障なければ治療は不必要

精神分裂病というのは、ひとつの精神の症候群と考えられます。ですから、症状の上ではほぼ一定のものがありますが、起こり方も経過も治療内容も、人によってそれぞれ違います。

かつて遺伝病といわれたこともありますが、遺伝と推定されるものはごくまれで、大多数はそうではありません。現在では環境、心理的ストレス、体質や性格などが、人によりさまざまに入り組んで起こるものと考えられています。

お尋ねの「脳のある物質が侵されて」ということについて触れてみましょう。私たちの脳は、意識や情趣、知的活動などの情報の飛び交う、極めて精密な通信機関と考えられます。その中で情報を伝える系路やそこを流れる神経伝達物質といわれるものの機能が、患者さん(分裂病とは限らない)の一部について、過剰になったり、あるいは低下したりするのではないかという仮説があります。そして、ある種の薬物がそれらの機能を抑えたり、促進したりするということも分かってきました。

精神分裂病の治療はさまざまですが、一部はこうした薬物の作用を利用して行われます。もちろん、精神的な支えを中心とした精神療法、環境や生活を軸とした社会療法なども無視できません。

このようなことで、仮に脳内の物質の変化があるにしても、いや、それであればなおのこと薬剤治療の意味が出てきます。さらに不安や抑うつがあれば、それらを取り除く薬も使われ、効果を高めます。

あなたの場合、12年経過していらっしゃるとのことですが、様子はどうでしょうか。何事もなく社会生活をしていて、自他ともに支障がなければ、治療はいりません。そのような良性の経過をとる場合もめずらしくありません。しかし、もし何か具合の悪いこと(これは本人が自覚するとは限りません)があれば、ぜひ近くの専門機関を受診し、相談して下さい。対応策が見つかるはずです。

(国立療養所鳥取病院院長・福間悦夫)