健康ア・ラ・カルト

【21)こころの病気】  9)睡眠中に喉がよく渇く

質問

74歳の男性です。近年、夜間睡眠中に口の中や喉(のど)がよく渇いて困ります。糖尿病の検査も受けましたが、異常はないとのことでした。「副鼻腔(くう)炎のために口を開けて寝ているからではないか」とか、「老年になれば唾(だ)液が出にくくなるからだ」とか言われますが、口は閉じたままだと思います。現在は耳鼻科に通院していますが、なかなか治りません。どうしたものでしょうか。

回答

◎睡眠時無呼吸症候群

口や喉の乾燥感を起こす原因はさまざまで、糖尿病や尿崩症(必要以上に大量の水分が排せつされる)などのように、身体の機能を調整しているホルモンの働きの乱れで起こるものもありますが、あなたの場合は糖尿病の検査なども受けられているようですから、まず、それらはないものと考えましょう。

比較的まれな病気で、「シェーグレン症候群」というのがあります。これは全身の粘膜が乾燥する病気で、口や喉、目などが乾燥し、関節の痛みなどを伴うことが多いものですが、中年期以降の女性に見られやすいもので、あなたの場合、特に目の強い乾燥や結膜炎などないのなら、こうしたものでもないでしょう。

あなたは太っていますか。よくいびきをかきますか。そうしたタイプの人に比較的多いのが、最近注目されている「睡眠時無呼吸症候群」です。これは、夜間睡眠中に激しいいびきと周期的に呼吸の止まる発作を繰り返すのが特徴で、重症になると、心不全や突然死のおそれもあるものですが、自分では案外気がつきません。こうした人の中に、起床時の口の乾きや喉の痛みを訴える方がいらっしゃいますので、あなたの場合も、一応考慮に入れる必要があるかもしれません。

ほとんどの場合、一晩の検査で診断は確定し、その原因(タイプ)に応じた治療も出来ます。また、睡眠が深くなるとともに知らず知らず口元がゆるんで、口で息をすることになることも考えられますが、睡眠姿勢を変えることによっても呼吸の仕方がいくぶん変わるので、工夫されてもいいかもしれません。

緊急性はないにしても、口や喉の乾きはその他の要因でもよく起こります。ホテルに泊まった時のように、エアコンで室内の湿度が低い場合も口が乾燥しますが、室内を加湿したり、寝るときに内側のガーゼを湿らせたマスクをして喉の乾燥を防ぐ方法もあります。一般に、高齢になると唾液の分泌機能が低下するので、主に夜間に口が渇きやすくなります。ことに、脱水しやすい就寝前のアルコールの取り過ぎには注意しましょう。

このほか、心理的な要因で口が渇くこともありますし、一部の薬剤の副作用として、口内の乾燥を生ずることもあります。いずれにせよ、改めてまず、原因をゆっくり確かめていくことが必要で、これに応じ、あなたにあった対策が立てられるでしょう。

(国立療養所鳥取病院第一精神科・坂本 泉)