健康ア・ラ・カルト

【21)こころの病気】  2)幻聴―時々、女性の声が―

質問

25歳の男子の母親です。3年程前から、時々、「女性の泣き声や笑い声が聞こえる」と本人は申しておりました。最近、「幻聴」という症状を知り、病気ではないかと心配です。今は、「声は入らない」と言います。本人はユーモアのある明るい性格ですが、このごろ、運動不足で肥満気味です。病気の予防法についてお教え下さい。親せきに、うつ病の人がいました。

回答

◎早期発見・早期治療

現実にない感覚が感じられることを、幻覚といいますが、最も多いのは、音・声などが聞こえてくる『幻聴』という症状です。しばしば、不眠、不安・恐怖感、被害的気分などをともなって出現し、本人は苦痛に感じます。ご質問の症状は、確かに幻聴と考えられます。

幻聴は、精神分裂病、アルコール依存症における離脱症状などで現れることが多いのですが、ストレス状態が続いた後の心因反応として現れたり、時に、そううつ病の急性期に出現することもあります。

幻聴の存在のみで、ただちに病気かどうか、あるいは、どんな病気かなど判断できませんが、ご相談のケースは、幻聴としても頻度が極めて少なく、また、幻聴によって感情面、行動面に大きな変調を来すことはなかったようです。ただし、心の内面におけるストレス状態がわずかずつ積み重なって、社会活動が困難となり、他人との接触を避けて、閉じこもりの生活が長く続くことがあります。今回のお手紙の範囲では、運動不足で肥満傾向とのことですが、どの程度の社会的活動をなさっておられたかがはっきりしません。

心の病気、ないし心の不健康状態は、幻聴のように表に目立ちやすい症状(陽性症状)で現れることも多いのですが、背景に感情面の微妙な変化・過敏性がみられたり、会話量が減少し、人との接触を極端に避けるようになったりなどの精神活動性の減退(陰性症状)が前駆段階として長く続いていることもしばしばあります。

心の病気の予防には、普段から家族・友人・同僚との温かいコミュニケーションを維持し、孤立して悩みが増幅してゆくことを早い段階から防いで行くことが重要です。この際、悩みが深く、しかも持続する場合、気軽に専門医へご相談下さい。心の病気も体の病気と同じく、日常の健康管理、および万一病気の場合も、早期発見・早期治療が大切なのです。

(県医師会・渡辺 憲)