健康ア・ラ・カルト

【19)男性の健康問題】  2)包茎の害

質問

包茎の害について教えて下さい。特に、夫婦生活にどんな問題点があるのでしょうか。

回答

◎専門医による治療を

陰茎の亀頭部が余分の包皮で覆われている状態を包茎といいます。先端の包皮輪が狭くて亀頭が露出しない状態を真性包茎といい、用手または勃起で包皮が反転して亀頭が露出する状態を仮性包茎といいます。

◎包茎の加齢による変化

生後1年ぐらいは、亀頭と包皮内板が癒着した真性包茎が多く、その後小学校高学年までに勃起や手指でのいたずらで癒着がはがれ包皮輪が広がり、包皮がめくれるようになります。思春期に性器が急速に発育して亀頭が露出しますが、この思春期で50%、30歳代で20%に包茎がみられます。

近年、乳児検診の普及で真性包茎は乳幼児期に治療されます。しかし公衆衛生の不備の時代に幼児期を過ごした高齢者の中には、真性包茎のままの人が少なからずおられます。

◎包茎の弊害

1. 尿の出口の狭い真性包茎では、放尿時、包皮の先がふくらみ、力んで排尿しなければなりません。これが長年月続くとぼうこうや腎臓(じんぞう)の働きが悪くなり、さらに、そ径ヘルニアの原因にもなります。早目に(新生児のうちに)狭い包皮輪を切開する手術が必要です。

2. 包皮内は常に尿で汚れ、包皮内板や亀頭のあかが混ざって尿臭の強い黄白色の恥垢(ちこう)がたまり、炎症や細菌感染が起こりやすくなり、大腸菌などが感染すると先が赤く腫(は)れてうみが出る亀頭包皮炎になります。悪化すると尿道炎やぼうこう炎になります。真性包茎では抗生物質で感染を治療してから手術します。

仮性包茎では毎日の入浴時に包皮をめくって包皮内板や亀頭を優しく洗って軟こうを塗ります。

3. 学童期には友達と陰茎の大きさを比べ合うことがあります。小さく見えたり亀頭が出ないことに劣等感を持つと、成人しても異性との交際に支障が起こります。真性包茎は思春期の陰茎の発育障害にもなります。

4. 常に包皮で保護されている亀頭は表面が弱いままで、性的刺激を強く感じます。性交時、亀頭が強く痛んだり、早漏の原因にもなります。恥垢が付着したままの性行為は不潔で、女性のぼうこう炎の原因やオーラルセックスの妨げにもなります。恥垢の発がん性には議論がありますが、割礼をする民族には陰茎がんや性交相手の子宮けいがんが少ないといわれています。日本では、陰茎がん患者の60~90%は過去に包茎であったという報告もあります。

◎包茎の管理

包茎の手術は、真性包茎はもちろん、仮性包茎でも、包皮が長過ぎる・精神的劣等感・亀頭包皮炎を繰り返す、などの場合には必要です。手術は簡単で年齢を問いません。

仮性包茎では、排尿時には亀頭を出して放尿し、毎日の歯磨きや洗顔と同じく、入浴時に包皮を反転して優しく洗うことが大切で、一生続けなければなりません。性行為の前後には必ず洗うことをお忘れなく。

(国立米子病院泌尿器科・石田晤玲)