健康ア・ラ・カルト

【13)がん】  8)大腸がん検診のすすめ

◎はじめに

大腸がんは、増加しつつあるがんのひとつです。増加の原因については、食生活の欧米化などが挙げられていますが、近年の大腸がんの増えかたは驚くほどです。皆さんの中にも、知り合いの方が大腸がんで手術を受けたり、亡くなられたりという方がおいでのことと思います。

増えつつある大腸がん死亡に歯止めをかける方法として、大腸がん検診があります。鳥取県では、平成4年から鳥取県健康対策協議会が中心となって全県内で大腸がん検診が始められました。受診者は年々増えてきて平成10年度は年間約5万人が受診しています。しかし、受診対象者全体からみると4分の1程度にしか過ぎません。

◎大腸がん検診の方法

普通、大腸がんの臨床症状は出血、腹痛、便秘などの便通異常(ひどくなると腸閉塞)が主なものです。肛門に近い部位の大腸がんでは顕出血(目に見える出血)が比較的多く、痔出血と思って放置していたため手遅れになったという人もいます。便秘や腹痛にしてもこれらの症状はがんがある程度大きくなってから起こることが多く、それから検査を受けても早期発見というわけにはいきません。

一方、がんは小さいうちから出血しやすいという性質があるので、大腸がん検診は目では見えない便の潜血反応を調べることによって極少量の出血をチェックし、症状のでる前のがんを発見しようとするものです。

具体的な検診方法は、まず一次検診として便潜血反応を調べ陽性者を要精検として精密検査にまわします。受診者の8~9%が要精検となります。

精密検査としては、大腸内視鏡検査、ないし注腸X線検査が行われます。見落としなどを防ぎ検診の精度を高めるため精密検査を行う医療施設は指定制となっており、現在県内に約130施設が指定されています。

◎検診発見大腸がんの特徴

検診で発見された大腸がんは、平成4年から9年までの6年間に県内で736例ありました。これら検診で発見された大腸がん(検診群)と症状があって病院を受診し発見された大腸がん(有症状群)とを比較してみますと、まずがんの深達度が粘膜下までにとどまっている早期がんは検診群では60%以上を占めましたが、有症状群では20%以下でした。

また、がんの直径が2センチ以下のものは検診群では半数以上を占めるのに対し、有症状群では18%にとどまりました。有症状群の中にはリンパ節転移例も多いが検診群では転移例はわずかでした。

このように検診発見がんは腸壁への深達度が浅く、大きさも2センチ以下のものが多く、従って治療法も開腹手術までしなくても内視鏡を使用して粘膜切除を行うことによってがん組織を取り除くことが可能となりました。

今や検診発見がんの40%以上はこういう方法で治療が行われています。

◎おわりに

大腸がん検診はこのようにがんの早期発見、早期治療に効果をあげていますが、問題が無い訳ではありません。

そのひとつは偽陰性例の問題です。がんがあるのに便潜血が陽性にならない例がいくらかあります。便潜血反応の信頼度は100%ではないということです。従って一次検診で異常なしといわれても顕出血が続く等の症状がある場合は医療機関を受診することをおすすめします。

しかし、例外はあるにしても大腸がん検診では救命可能ながんが数多く発見されています。

大腸がんで死なないために大腸がん検診をぜひ受けられるようお勧めします。

(鳥取県立厚生病院内科・石飛誠一)