健康ア・ラ・カルト

【8)内分泌疾患】  7)バセドウ病の治療

質問

33歳の女性です。3年前、第3子を出産後に、動悸(き)、息切れとともに甲状腺(せん)の腫(は)れに気付き、バセドウ病と診断され、抗甲状腺剤の投与を開始されました。この1年くらい甲状腺機能は安定しているといわれていますが、外見上、腫れが目立ち、悩んでいます。主治医からは手術を勧められていますが、手術以外に何か方法はありませんか。

回答

◎甲状腺亜全摘術

お便りの内容からしますと、典型的なバセドウ病で、しかも内科的治療では寛解が得られにくい症例のようです。バセドウ病の原因は甲状腺刺激抗体です。図に示したように、この抗体は甲状腺ホルモンの合成を刺激するとともに、甲状腺を腫大させます。

投与された抗甲状腺剤は特異的に甲状腺内に取り込まれ、甲状腺ホルモン合成を阻害し、約半数の症例はこの抗体の消失とともに甲状腺も縮小し、寛解します。しかし残りの半数の症例は、抗甲状腺剤中止後に再発します。特に甲状腺腫の大きい症例では、この抗体がいつまでも検出され、再発しやすく、このような症例では甲状腺亜全摘術やアイソトープ療法の適応となりますが、後者は年齢的に避けた方が良いでしょう。

手術ができなければ抗甲状腺剤を継続せざるを得ませんが、甲状腺を小さくし、寛解をめざす方法がなくはありません。その前に、抗甲状腺剤が効き過ぎて図に示すように下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が過剰に分泌され、甲状腺が大きくなっている可能性などの他の原因を除外した上で甲状腺刺激抗体を測定し、陽性であれば、次のような方法でバセドウ病の寛解をめざします。

メチマゾールという抗甲状腺剤を4~6錠投与します。その後、甲状腺ホルモンが低下してきますので、TSHが上昇しないように甲状腺ホルモン(サイロキシン)を併用し、半年~1年観察します。私たちの経験では、この方法で約半数の症例は甲状腺刺激抗体が消失し、徐々に甲状腺腫も縮小してきます。この方法は特殊な方法ですので、甲状腺専門医に相談されることをお勧めします。

(鳥取大学医学部第一内科・重政千秋)