健康ア・ラ・カルト

【4)気道と肺】  6)肺気腫・慢性気管支炎

質問

73歳の男性です。肺気腫(きしゅ)、及び慢性気管支炎の診断にて、在宅酸素療法を受けています。病院では4種類の内服薬と2種類の吸入薬をもらっていますが、粘性の唾(だ)液か、痰(たん)の如きものがよくでて、口腔(くう)内が絶えずねばつき、発声が苦痛です。これ以上、病状が悪化しないようにするにはどんな点に注意したらよいか、また発声が楽になるような方法があれば、ご教示下さい。

回答

◎禁煙と規則正しい生活

肺気腫、及び慢性気管支炎は、共にいわゆる慢性閉塞性肺疾患と呼ばれるもので、肺機能検査では、空気を一気に肺から吐き出せない状態を示す閉塞性換気障害を呈するものです。

さらに肺気腫は喫煙を原因として、体外から血中にとり入れる酸素と、血中から体外に出す炭酸ガスを交換する場である肺胞を中心とした末梢(しょう)気腔に不可逆的な破壊が起こり、このために血液中の酸素量が減少し、労作時に息苦しさなどが起こってくるものです。また、慢性気管支炎は気道分泌の過剰産生、つまり、たえず痰が出る状態を示すもので、特に感染の合併により多量の膿性痰がでます。さらにこの患者さんの場合には、病状が進行し、酸素吸入の適応である慢性呼吸不全状態にあるものと考えられます。

さて、ご質問の病状悪化の防止法に関しては、すでにご承知のことと思いますが、慢性閉塞性肺疾患の原因、及び増悪因子であるタバコをやめることがまず第一に挙げられます。さらに、風邪ひきなどの二次感染により呼吸状態が悪化しますので、極力風邪をひかないように心掛けることが大切です。

そのためには、規則正しい生活と適切な栄養の摂取(満腹になると呼吸苦が強くなる場合には、食事を1日4~6回に分けて取るのも一法ですし、心臓への負担を減らすために、塩分の取りすぎに注意すること)が必要です。

また、うがいや排痰による気道クリーニングも有効です。薬物療法としては、吸入器具を用いた抗コリン剤の吸入と言った気管支拡張剤や、去痰剤などが有効な場合もあります。

次に、口腔内が絶えずねばつき、発声も苦痛とのことですが、この原因としては、痰がうまく切れないことや低肺機能による発声障害が考えられます。

この場合には、排痰法や腹式呼吸などの訓練が有効ですので、肺理学療法の指導を受けられることをお勧めします。さらに薬物の副作用の、口内乾燥による口腔内のねばつきの可能性もありますので、主治医とよく相談されることも大切です。

(鳥取赤十字病院内科・山本光信)