健康ア・ラ・カルト

【16)耳・鼻・のど】  6)メニエル病

質問

73歳の男性。自営業で、毎日10時間くらい労働しています。血圧は普通ですが、以前は低血圧でした。最近、内科医院で「メニエル病」だと言われ、薬と注射をしています。「メニエル病」とは、どんな病気ですか。

回答

◎激しいめまいや耳鳴り

メニエル病の疫学、病態、治療について説明します。

メニエル病は、男性では働き盛り、女性は更年期の社会的、家庭的、肉体的にストレスの多い30~50歳代に多くみられ、小児(15歳以下)、老人(65歳以上)に少ない疾患です。頻度に男女の性差はありませんが、患者さんの性格はきちょうめん、神経質な人におこりやすく、朝から午後に多く発症します。

なぜ、メニエル病が発症するかということですが、これにはいくつかの説があります。その主なる病変は内耳(とくに内リンパ水腫=しゅ=)にあり、その病態は全身的な要因や自律神経系の異常(ストレスにより起こりやすい)、内耳の迷路外の要因(耳の発育不全)などで発現したり、消長したり変化します。

症状は激しい回転性のめまいが反復性におこり、その随伴症状は、多くは片側の耳鳴り、難聴、耳閉感(耳がつまった感じ)があります。また、悪心、おう吐、冷や汗などの自律神経の症状もあります。めまい発作については、60%の人が数時間で消失しますが、耳鳴りや難聴については発作の時期と関係なく持続することがあり、強い音に対する聴覚過敏性がみられることがあります。

それらの症状はメニエル病の診断上、きわめて重要ですが、めまい発作の時に四肢のしびれ感や複視、言語障害、激しい頭痛、意識消失などの中枢障害を思わせる症状がないことが、脳病変としてのめまい疾患と異なるところです。

めまいや平衡障害については平衡機能検査を、耳症状については聴覚検査を行います。平衡機能検査というのは、ふらつきを検査して、その程度や病巣診断をするもので、耳鼻咽喉(いんこう)科で行います。

めまいの治療については精神安定剤、血管拡張剤、鎮暈(うん)剤を中心にした薬物療法がありますが、まず大切なことは、めまいの原因を患者さん自身がよく理解されることです。そのためにも平衡機能検査や聴覚検査が重要になります。

めまいや平衡障害は、いろいろな部位のいろいろな原因によって現れる症状ですし、患者さんも不安感を強く訴えられます。その不安感からめまいが発症し、増強することもありますので、納得のできる検査をうけられて治療されることをおすすめします。

(東部医師会員・麻木宏栄)