健康ア・ラ・カルト

【9)血液の病気】  5)老人の貧血

質問

75歳、男性。咳や痰、それに微熱があって医院に受診しました。X線写真で気管支炎とされ、お薬をもらってよくなったのですが、その時、貧血、それも血液のどの成分も減っていると言われました。紹介された病院では、老人の貧血で、まだ白血病にはなっていないと言われました。どんな病気で、どんな注意をしたらいいのでしょうか。

回答

骨髄異形成症候群

血液のどの成分も減る病気は、まず、骨髄異形成症候群(以下MDS)と再生不良性貧血です。質問の内容から、MDSが最も考えられます。

◎MDSとは

血球の異形成、すなわち骨髄および末梢血における血球(赤血球、白血球、血小板)の数量的ならびに質的異常を特徴とする病態で、不応性貧血とも称されます。通常の貧血治療薬である鉄剤やビタミン剤では治らない慢性進行性の造血障害で、30%の患者さんは経過中に白血病に移行します。発病年齢のピークは60~70歳代にあり、わが国の人口の高齢化とともに増えつつあります。

◎予後判定のための分類

MDSの治療反応性や予後(病気のたどる経過についての医学上の見通し)は芽球(若い細胞)比率、染色体異常および血球減少の程度などで予測することができます。

低リスク群、中間リスク群、高リスク群に分かれ、群によって治療法が異なります。どの群かを診断し、対処してください。

◎注意点

赤血球の減少では貧血、白血球(とくに顆粒球)の減少では感染症、血小板の減少では出血傾向がみられます。質問のように気管支炎などに罹り易くなりますので、発熱時などは直ちに主治医に相談してください。採血時の穿刺部位の止血を十分に確認することです。また、家族の方々の精神面でのサポートも重要です。

(鳥取県立中央病院院長・植木壽一)